先日の投稿で「オナラ」を意味する言葉は fart、gas、flatulence の3つもあることを書いた。会話の中でどれを使っても意味は通じる。
なぜにたかがオナラに何個も単語がある?オナラだけじゃない、英語ってどんな言葉でも複数の単語がある。辞書にちゃんとのる単語たちに加え、時にはスラングもあるから覚えるのが大変だ。
例えば、「買う」という動詞はbuyまたはpurchaseパーチェス。犬のdogだって文章や正式な書類だとcanineケイナインとなる。うちの子たちの獣医さんの書類はdogじゃなくてcanineだ。猫もだよ。catじゃなくてfeline フェリーンだ。
中学か高校でpurchaseは「買う」と教えられて「え、買う、ってbuyじゃなかったっけー?」と思われなかっただろうか?私は思ったね。そういうのいくつもあって、なんなのーと思いながら単語帳に書き込んで丸暗記した。
なぜ一つの言葉に何個も単語があるのかというと、至ってシンプルな説明がその裏にはあるということを最近知った。
古くはゲルマン民族だったイングランド、元々の言葉はゲルマン由来だった。その後北欧の言葉の影響も受けながら現在の英語の基礎となるオールドイングリッシュという言葉が出来上がった。ま、農民言葉である。その頃の言葉は語源が同じドイツ語に似ていて、古代英語なら読めるよ!というドイツ人がたくさんいるらしい。ほほう〜。
11世紀にウィリアム征服王というフランス人の王様がイギリスに乗り込んできて、そこから宮廷ではおフランス語に。政治、宗教、経済、医学、学術など上流階級よりの用語はどんどんフランス語がとりいれられ、洗練したかっこいい言葉として特に上記の分野ではフランス語が定着した。
英語の勉強をしたことがある人なら「コミュニケーション」がフランス語で同じ綴りで「コミュニカシオン」になるとか、あら、似てるわーと思われたことがあると思う。そういう感じ。
下々の者へおフランス語が伝わるようになるのはもっと時間がかかったし、上流の人たちは農作業をするわけではないのでそのへんの言葉は粗野なゲルマン由来のオールドイングリッシュが定着。
ま、要するにシンプルで日常的な言葉はダサい(すまん)ゲルマン系のオールドイングリッシュ、気取ったむつかしい言い回しを必要とするのがフランス語源、と考えて十中八九間違いない(言語学者の皆さんには怒られるかも)?
おもしろいのは、上流の医学、文学などの他には食べ物、娯楽関係の言葉もフランス語由来が多いんだって。いかに上流階級や宮廷で飲み食い、パーティが大事だったかを物語るネ。
犬のdog と canine、車のcar と automobile オートモービル。ほかには
belly – abdomen (お腹)
drink – beverage (のみもの)
job – profession (仕事)
gift – present (プレゼント)
many – numerous (たくさん)
talk – communicate (話す)
youth – adolescence (若さ)など。たくさんある。
ノルマン征服以前のぶっきらぼうなイギリス人は狩りや農耕に忙しく、長い単語を口にする暇はなかった….のか?結構パッキリと短い言葉が多いように見受けられる。上流階級は座って話したり読んだり書いたり食べたり歌ったりするのが仕事だったから、単語自体も冗長にできていて、難しい文語の言葉をたくさん知ってるっていうのは一種のステータスシンボルだったのだね?
もちろん言語の発達はもっと複雑で、ラテン語やギリシア語だって入ってくるし、フランス語の男性名詞、女性名詞、というのは英語になるときに何処かでほっぽりだされている。
毎日英語の環境で暮らしている私の自分なりの解釈の域を得ないけれど、民族移動と侵略を繰り返して国境地図が出来上がってきたヨーロッパ由来の言葉ならではの複雑さである。
さて先出の「オナラ」。医学用語のflatulenceの語源はもちろんフランス語。fartの方は、ゲルマンのfartenである。gasは、多分「オナラ」と直接口にするのを憚って「気体」と遠回しに表現するようになったイギリス、またはアメリカ生まれであろう。そういえばイギリスではオナラをgasの他にwind(風)とも言う(笑)。確かに小さな風は起きる….
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