なんちゃってニューヨーク

普通の人のアメリカ生活


バイデンの涙・後編

2日に渡ってイスラエル・ハマス抗争について書かせていただいた。私は政治学者でも歴史学者でもない普通のオバちゃんだが、アメリカに住んでいると今回の抗争はとても身近だ。家族のいるイスラエルに戻った友人もいるし、若い甥っ子、姪っ子が兵役に戻り制服を身に着けてガザへと向かった友人もいる。ニューヨーク周辺はとってもユダヤ系人口が高い地域なのだ。

バイデンの涙ながらのスピーチ、アメリカの轍を踏むな、同じ間違いを起こすな、というメッセージがイスラエル首相や国民に届いてほしいと思ったが、最近のナタニエフ首相のスピーチではその気配はなかった。

ナタニエフ退任?

スピーチでは

Ceasefire シーズファイヤー 停戦

などありえない、それはイスラエルに降伏しろと言っているのと同じだ、と述べただけではなく「真珠湾攻撃の後アメリカは停戦したか?911事件の後アメリカは停戦したか?していない、おなじことだ。」

https://www.timesofisrael.com/liveblog_entry/netanyahu-tells-foreign-press-calls-for-a-ceasefire-are-calls-for-israel-to-surrender/

「今イスラエルも同じ局面に立っている。歴史には平和な時と戦うべき時の2つが混在する。今はわたしたちにとって戦うべきときなのだ。」

とまるでバイデンに「黙ってろジジイ」と言わんばかりの挑発的な内容であった。

残念ながら、彼にはゼレンスキー大統領のようなカリスマ性はなく、誠実さも感じられない。

「国民の安全を守る」ことが大きな存在価値であったにもかかわらず、イスラエル軍が南西部のキブツ(生活共同体)にハマスの侵攻後到着するのに7、8時間かかり今回の大惨事に繋がった。このことを「軍部による致命的なミスだ、がっかりさせられた」と同じスピーチの中で述べた。

あなた首相なんだから、軍部もあなたの責任でしょうが?部下を

throw them under the bus 他人を犠牲にする、裏切る、責任転嫁をする

とはリーダーにはあるまじき行為だ。

Sir Winston Churchill

内部にはナタニエフの退任を求める声が上がっていると聞く。ナチスドイツが台頭を続けていた1940年、イギリスのチェンバレイン首相の対独・戦争政策のまずさに、チャーチルにその座を譲らざるを得なかったという歴史をたどり、今のイスラエルのような極端な状況をリーダーとして引っ張っていく力量はナタ二エフにはないという声が内外から上がっている。

バイデンの涙・中編に書いた「洗濯物事件」が真実であるとしたら私もおおいに同感だ。

今後は

一体どうなるのだろう。イスラエルが攻撃を続ける理由は2つ。人質の救出とハマスの壊滅だ。

ガザには、地下トンネルの網が複雑な蜘蛛の巣のように張りめぐされており、人質はそこに散らばって隔離されていると言われる。人が一人通れるほどの細いトンネルに地上戦の戦士が侵入し、そのトンネルの地理を知り尽くしているハマスを相手に救出活動というのは一般人だってその難しさは容易に想像がつく。

ハマスの壊滅に至っては延々と続くモグラたたき。

新たな憎しみのサイクル

また新しい憎しみのサイクルが始まった。今回家族を惨殺されたイスラエル人、そしてイスラエルからの攻撃で家族をなくしたパレスチナの人たち。イスラエルの外務省が公開した電話の会話の録音を聞き私はぜぼねが冷たくなった。

今殺害したばかりのイスラエル女性の携帯を使ってガザにいる両親に電話をしている若い男性の声。「お父さん、お母さん、おれはやったよ、何人も何人もユダヤ人を殺したんだ!いま殺した女の携帯で電話しているんだよ!」それに応える父親「よくやった!神のご加護を」。

この若い戦士は、うまれたときから自分たちの土地を奪ったユダヤ人を恨む親の話を聞き、ユダヤ人など人間ではないという確信のもと今回の凶行に嬉々として加わった。それ以外知らないのだ。彼のせいではない。そうとしか教えられていない若者がごまんといるのだ。

人口100万人のイスラエル、ユダヤ人など出ていけと心から願っている、周りを囲むイスラム諸国の人口はあわせて15倍の1500万人だ。今回の抗争が一応の終わりを迎えたとして、それからどうなるのか。

イスラム諸国の中では一番の親・西側であるヨルダンでさえアメリカのイスラエル支援に対して強く遺憾の念を表している。

アメリカではこんなことが

シカゴ近くではアパートの大家が自分の建物に入居しているパレスチナ人の家族を襲い6歳の男の子が亡くなった。そしてミシガンではユダヤ教の女性ラビ(聖職者)が自宅前で差し殺されるという事件があった。

もともと深く流れていたアメリカの anti-Semtism アンタイ・セメティズム(ユダヤ人に対する強い嫌悪と偏見)やネオナチ感情が色々なところで溢れ出てきている。

昨日はニューヨーク州イサカにあるコーネル大学で、ユダヤ人学生団体へ襲撃と殺害の脅迫メールが届いたことに反応して、大学側が厳しい対応を約束する表明を行った。

我が子が通う大学でも警備の補強などの対策を取っている旨、父兄にお知らせが届いた。

ちょっとこれが世間の分からない部分だ。コロナが流行っているときにはアジア系へのヘイトクライムが急増したが、シャットダウンしたアメリカに今すでにいるアジア人たちがコロナをどうやって持ち込んだというのか?ちょっと考えてみてらいかに馬鹿げた行動であることか。

ホワイトハウスにはガザへの攻撃をやめてほしいとたくさんの「ユダヤ人」が集まりデモを行った。イスラエルの強硬姿勢に反対するユダヤ系アメリカ人は多い。

ニューヨークのブルックリンではユダヤ人とパレスチナ人が合同で平和を願うデモを行った。

アメリカでは、ホワイトハウスが申請したイスラエルへの巨額の支援については議会通過を待っている状態だが、ウクライナ支援には常に渋い顔を見せる保守党からの強い支持が見られ、修正が入るとしても通過は間違いない。

ガザ難民とナタニエフとイスラエルの今後

そして今後どうなるのか、ガザ難民の問題。同じクリスチャンで、誤解を恐れずに言わせてもらうと肌の色が同じウクライナの人々は、ヨーロッパ諸国と北米諸国に受け入れ態勢があっという間にでき上がった。シリア難民には決して差し伸べられることのなかった支援の手だ。

Photo: CNN

エジプトはガザ難民の受け入れは完全に拒否、未だ国境をほとんど封鎖の状態であるし、肝心のパレスチナ政府は?実はおおきな「おでき」のような存在であったハマスがイスラエルの軍事攻撃により壊滅状態になることを臨んでおり、ガザ難民への支援や救済は後手後手だ。

イスラエル国内では軍隊、そして政府への不満が大きく高まっている。

たとえハマスに対する今回の軍事行動が一応の決着を迎え多くの人質が無事保護されたとしても、国内で大きな「見直し」が行われることは想像に難くない。

まとめ

イスラエル建国以来、大きな間違いを犯し続けてきたイスラエルとテロリストのような時限爆弾を抱えながら手をこまねいていたパレスチナ。この両国をぐるりと囲むイスラム教諸国、そしてアメリカの介入。

アメリカだけではなく、メディアの介入。ハマスがイスラエルに攻撃をした10月7日には、ハマスは完全な悪者であった。今もそれに変わりはない。彼らの蛮行は何度同じ話を聞いても身の毛がよだつ。

が、今CNNを見ても、新聞を読んでも報道されるのは破壊されたガザの内部と逃げ惑うガザ市民だ。攻撃を開始するから安全な南部に移動するようにとイスラエルから通達が来たことを受け、小さな子供を連れて着の身着のまま徒歩で向かった南部。

そこではエジプトへの国境は封鎖されたまま水と食べ物もなく、南部は安全だと約束されたはずなのに爆撃もある。イスラエルは完全悪となりつつある。

この3週間で風向きは大きく変わってしまったのだ。イスラエルがそれを知っているのか、知っていたとしても関係ないのか。これ以上の軍事行動はこのまま行けば世界中を敵に回しかねない。

そしてイランとロシア。ウクライナでの悪行から世間の目が離れ、アメリカからの兵器の補助もイスラエルとはんぶんこをしなくてはいけなくなったウクライナ。この抗争で一番特をしているのはこの二国だ。

考えることは尽きない。私にできることは、選挙に参加し、公正な代表者を選び、民主主義の存続を何が何でも守らなくては、ということしかない。

読んでいただいてありがとうございました。



“バイデンの涙・後編”. への1件のコメント

  1. こんにちは。
    コーネル大学の学生(アジアンアメリカンでしたね・・・変な言い方ですが、正直めずらしいな、と、思いました。)、相当病んでいたようですが(自殺をほのめかしていた?)、どこまで本人が実際反ユダヤの思想を持っていたのかちょっと気になります。コーネルは明日は急遽休校らしい・・・。

    それにしても、ナタニエフやばすぎジジイですよね・・・(洗濯www)。イスラエルも、パレスチナも不憫です。最近色々な所でも先住民に土地などを帰還させるみたいな話も聞きますが、なんかこうやって宗教や歴史や政治家の目論見やいろいろが絡んで、コンフリクトしてねたみあって戦争になっていくんだなぁと感じています(先住民のランドバックは将来そうならないでほしいですが・・・)。

    いつもとても分かりやすい文章で、色々と考えさせられます。これからも色々な記事楽しみにしております!

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ニューヨークから40分南に下ったニュージャージー州から発信。だから「なんちゃって」ニューヨーク。マンハッタンのおしゃれな情報をお探しの方は他にたくさんブログがありますのでそちらをご参照くださいね。元・MBAの仕事人、在米約30年のアラ還。アメリカ人の夫とエンプティネスト元年を満喫中。わんこ3匹で毎日がわや、普通の人のアメリカ生活の記録です。

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