なんちゃってニューヨーク

普通の人のアメリカ生活


JALについてまだ考えている

1月1日の地震、1月2日の羽田の事故、そして3日には秋葉原駅ナイフ死傷事件。波乱の2024年幕開けだが、これで今年中のすべての厄が落ちてくれたと思いたい。当事者の皆さんのことを考えると胸が痛むばかりだ。

さて、昨日からずっとJALの緊急脱出について考え続けている。昨日のブログでも触れたのだが、米紙でも英紙でも大きな見出しで報道されている。日本のメディアは、と言うと残念ながら話は犯人探しに移行してしまっている様子で、ヒューマンエラーという言葉がトレンド入りしている。

これ 👇 が今朝のニューヨーク・タイムス(電子版)の見出しだ。

今朝のニューヨーク・タイムス

奇跡の18分脱出について約8000字、A4ページにして4枚くらいの記事が掲載された。抜粋してご紹介したい。

As Flames Surged, Order Prevailed Inside a Japan Airlines Jet

In addition to a well-trained crew and an advanced plane, the safe evacuation of 367 passengers came down to a relative absence of panic.

「炎が押し寄せる中、JAL機内で保たれた秩序が勝因だった」訓練が行き届いた乗務員と新機種の機体であったことに加え、緊急時のパニックが最小限であったことが367名の安全な避難に繋がった

という見出しの記事は、こう続く。

While a number of factors aided what many have called a miracle at Haneda Airport — a well trained crew of 12; a veteran pilot with 12,000 hours of flight experience; advanced aircraft design and materials — the relative absence of panic onboard during the emergency procedure perhaps helped the most.

「羽田の奇跡」と呼ばれるにふさわしい今回の緊急脱出劇は、避難訓練が行き届いた乗員12名、飛行時間12000時間のベテランパイロット、新機種機体の構造と資材などいろいろな構成要素が組み合わさったものであるが、何よりも避難時の機内でのパニックが最小限に抑えられたことが最も大きな勝因と言える。

乗務員の避難訓練

『JALのツツミ・タダユキ氏によると、緊急避難時に乗務員にもっとも要求されることは「機内のパニックを抑える」こと、そしてどの出口が安全かを見極めることだという。

JALでは、日常的に煙と炎を想定した訓練が行われており、乗務員はそれらの状況に対し

Mentally ready メンタリー・レディ 心の準備が出来ている

ように訓練されている。半年に一度、避難訓練の試験に合格することが義務付けられている。

乗客も立ち上がったり頭上から荷物を取り出そうとせず、乗務員の指示に従って煙を避けるために前かがみの姿勢になった。ほとんどすべての人が機内で脱いだままのジャケットも手荷物も置いて携帯だけをもって避難した。子供は「おろして!」ではなく「早くおろしてください!」と泣きながらも敬語を忘れていなかった。』

新型エアバス機

記事はさらに新型のエアバス A350-900についてこう続く。

Firewalls around the engines, nitrogen pumps in fuel tanks that help prevent immediate burning, and fire-resistant materials on seats and flooring most likely helped to keep the rising flames at bay.

『エンジンを囲む防火壁と燃料タンクに設置されたナイトロジェンポンプが機体が即時に炎上してしまうのを防ぎ、床と座席に使用されている防火素材が炎をある程度押し留めたと考えられる。

この機種は合計4つの緊急出口が設けられ、機体の両側からの脱出が可能であり、通路の両側にフロアランプが設置されている。機体の殆どが、防災に強いとされるアルミと同程度の効果をもつ人工複合資材で出来ている。』

記事が書かれたアメリカ時間深夜の時点では、JALのブラックボックスがまだ回収されていないことから、事故の原因についてはあえて言及されていない。

日本の強み

ここからは私が考えたこと。

秩序と権威に対する尊敬。権威、と言うとよくないね。専門家、責任者、と言い換えよう。責任者が責任者であるに足る人格と知識を兼ね備えているだろう、と自然に信頼できる文化と言うのはコレまた日本特有と言ってもいいと思う。

乗務員は乗務員たる訓練を重ね、今あるオプションの中から私達にとって最良の判断をしてくれるに違いない、と緊迫の機内でほとんどの乗客がそう思ったのではないか。乗客を置いて我先に、と避難をしたりしないだろうという信頼もあったにちがいない。

アメリカの学校に子供を行かせて気づいたことは、生徒と親からの「学校や先生に対しての尊敬の念」が日本とは段違いに低いということ。馬鹿な上司でも言うことを聞かなきゃいけないと言うのはたまらんだろうが、目上の人、自分よりもものを知っているだろう人に対して尊敬を抱く文化、色々とご意見はあるとは思うが、今回のJAL、この文化が役立ったのではと思う。

また日本の強みを一つ見つけた。

今後

ニューヨーク・タイムスの記事は、空港内での航空機のニアミス事故は日本に限らず世界中でどんどん増えていることに言及し、管制システムの見直しが今後世界中の課題として取り組んでいく必要がある、とまとめられている。

ニアミスが増えていたとは知らなかったが、責任が重大でしかも勤務時間が24時間シフト制で体力的にきつい。そんな中、職務中は常に極度の緊張を強いられる航空管制官に「なり手」がない、というニュースを聞いてからは久しい。

重大な指示のミスから起こってしまったのかもしれないし、パイロットの聞き間違えかもしれない。いずれにしても100%解明していない時点で『誰の間違いだったか』を深堀りするほど寂しいことはない。たとえ誰かのヒューマンエラーだったとしても、仕事に来るときに『今日はエラーをしてやるぞ』と考えながら来る人なんていないのだ。

原因や責任の所在を追求するのなら、それを「今後の事故防止に役立てるため」だけにしてもらいたい。特にネット上…..。

最後に。書いてて泣きそうになるが貨物室に預けられたペットは助けてあげられなかった。2匹。飼い主にとっては家族だ。何も分からず怖かっただろうな、一瞬で逝ってくれていればいい、と願うのみ。



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About Me

ニューヨークから40分南に下ったニュージャージー州から発信。だから「なんちゃって」ニューヨーク。マンハッタンのおしゃれな情報をお探しの方は他にたくさんブログがありますのでそちらをご参照くださいね。元・MBAの仕事人、在米約30年のアラ還。アメリカ人の夫とエンプティネスト元年を満喫中。わんこ3匹で毎日がわや、普通の人のアメリカ生活の記録です。

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