なんちゃってニューヨーク

ご無沙汰しております。

コロナを挟んで4年ぶりの帰省を果たし、楽しすぎる2週間を日本で過ごし、一昨日アメリカに帰ってきた。

東京では吉祥寺に泊まった。ホテルから井の頭口に向かうと、以前は階段しかなかった（と記憶している）入り口の左端に上下のエスカレーターが設置されていて、それを上りきると改札の横から新しい駅ビル『キラリナ』への入り口が。

エスカレーターの手すりはまだあたらしいのか、はっきりときれいな赤で遠くからでもよく見える。

2014年にできたというキラリナは知らなかった。8階、9階は私の大好きなユザワヤが入り、その下の階には本屋さん。本屋さんのハズレには大正風の喫茶店『椿屋カフェ』さんがあり、朝の10時だというのにディスプレーの中のモンブランに惹かれてご入店。朝食代わりにモンブランを食べると言う暴挙にでられるのも日本滞在中のみ。至福。

井の頭改札に向かって左後方は、吉祥寺ロンロンへの入り口だった。今はそれは閉鎖されていて、というかロンロン自体無くなって久しい。今ではパルコ側の入り口付近に『ロンロン市場』として野菜やお肉を売るコーナーが残っているだけだ。

大学の頃にはロンロンの中の本屋さんや小物やさん、毛糸屋さんなどを冷やかして歩くのが大好きだった。今のアトレも同じ構造だから、すっかり中が様変わりしても同じ道筋をたどると不思議に既視感が湧いてくる。

夕方に同じ場所に戻ってくると、アトレやキラリナの地下で夕食の材料やお惣菜を買い、急ぎ足で電車に向かう仕事帰りの人達で混み合っていた。6時をすぎるとお惣菜にはオレンジ色の値引きシールが貼られ始め、売り切れも出てくる。

そんな人たちの波が8時頃にはおさまり、今度は公園口の食べ物やさんや飲み屋さんが混み合っている。仕事帰り風の人、大学生。どのお店もいっぱいだ。井の頭口のエスカレーターもそんな人たちを間断なく上下に運んで、赤いベルトが動き続けている。

北口の裏を少し行ったところには進学塾の東進スクールがある。細身のスーツに身を包んだ大学生風の若い男性が『東進スクール』と書かれた旗を持って、小学生が駅前の交差点を無事渡れるようにグループにして誘導し、子どもたちが駅構内に無事入ったことを確かめると自分が横断歩道を渡って戻ってくる、この繰り返しをしている。こんなに遅くまで子どもたちは塾なんだね。

10時をすぎると今度はほろ酔いの人たちが街に出てくる。赤い顔をして、ファミリーマートでちょこちょこと買い物をして駅に入っていく。

まだまだ人足が絶えない駅から井の頭公園に向かって歩いていく。夜遅いのに、洋服屋さんや小物やさんはまだ店を開けている。公園の階段の上には昔からある焼き鳥屋さん「いせや」。私が大学の頃にはもうすでに古いお店だったから、一体いつからここで営業しているんだろう。いせやのお隣は、以前はドナテロウズというアイスクリーム屋さんだったが、今はおしゃれにテラスを設けたスターバックス、そのお向かいには『猿田彦』の小さな店舗ができていた。

いせやは、昔とは全く様変わりをして、表には木を縦に通したモダンな目隠しが付けられて、店舗もきれい。長年の焼鳥が染み付いた畳に座るとちょっと洋服が…..と気になったあのいせやとは思えなかった。

まだ時差ボケでぼんやりした頭で、40年前の吉祥寺と今の吉祥寺を行ったり来たりする。日本に住んでいたなら多分今でも頻繁に出かけていただろう吉祥寺は、もう何年も子どもたちを連れての帰国ではとんと行く機会がなかった、何年ぶりだろう。

40年は長く、渋谷のようにもっともっと変貌していたとしても不思議はない。でもそこは吉祥寺。駅の周辺は変わっていても少し歩くと昔のままのところがたくさんだ。ジャズ喫茶のサムタイムは入り口のサインも変わらず。昔から古かったサインと地下に降りる急な階段が一層古ぼけていた。

中もまったく変わらないサムタイム

プチロードのまざあぐうす。店主夫妻は年を召していらしたが、メニューが変わっていないという事実に驚愕。大好きだった鮭のドリアは今も健在だった。まだ30代であったろう昔の奥さんが、赤いオーブンミットをはめた手であつあつのお皿をおいてくれた瞬間がふっと頭に浮かぶ。こんな記憶、一体脳みそのどこにしまってあったんだろう。

年をとるって悪くない。こんなふうに自分の中に思い出が増えて、代わる代わる取り出しては眺めてみる楽しみ、若い頃には想像もできなかった。

40年来の旧友と吉祥寺を歩き、黄色いサインの『ロフト』をひやかす。2024年の手帳を見て回り、あれがいいんじゃない、やっぱりこれが、と大騒ぎ。下の階ではおもろい美顔器のサンプルを交互にはめてみて大笑い。それは大学時代から全く変わっていない私達の中身。お腹周りは別として。

とにかく楽しい旅だった。その楽しかった旅のことを忘備録代わりと言ってはなんだが、このブログでもここしばらくシェアしていきたいと思っている。