なんちゃってニューヨーク

普通の人のアメリカ生活


緊急投稿・イスラエル侵攻

昨日は、この夏に進学した次男の大学の

Parents’ Day ペアレンツ・デー

だった。どこの大学も、9月の新学期開始から6週間くらい経った頃、主に新入生の親と家族を対象にオープンハウスを開催する。次男の大学ではそれが昨日だった。

車で大学に向かっている時に、購読しているデジタル版ニューヨークタイムスから

Breaking News 速報

のお知らせが入ってきた。チラ見するとイスラエル南西部のパレスチナ自治区ガザから200基のミサイルが発射されたと書いてある。

最近の紛争は聖都エルサレムに近いウェストバンク寄りが多かったので、あー今回はガザなんだ、とそれだけ認識し、見違えてしっかりした次男と午後いっぱい楽しく時間を過ごし、幸せな気持ちで帰路についた。

帰りの車で携帯を見ると、ちょっと待って、これって戦争?

朝早い時間にはまだ未確認だった情報が、どんどんと裏付けをとってリリースされている。ガザ付近の村に侵攻したハマスのメンバーが、次々に起き抜けの家庭をおそっては、ただただ驚いている民間人たちを捕虜としてガザに連行してしまったと書いてある。

その場で理由もなく射殺された民間人も多数いると数時間後のテレビのニュースで知った。

イスラエルの、特にここ20年の対パレスチナへの強硬な態度には多くの批判があり、軍力増大、サイバー対策の充実、隣国への妥協を見せない外交政策、そして極右翼とラベルを貼る人もいるナタニエフ首相にまつわるキナ臭さ。何も知らない私でさえニュースを見て行き過ぎ?と思ったことが何度もある。

外部からの攻撃に備えて十分すぎるほどのインフラ投資を惜しまないイスラエルは、宗教などの例外を除いては18歳以上の男女全員に兵役があり、基本的には国民は40歳まで

Reserve リザーブ 兵役予備

として、年30日の兵役と国家の有事には兵役に戻ってくる義務が課せられている。軍隊と言っても全員が戦闘部隊に配属されるわけではない。

軍隊のインテリジェンス部門、ハイテク部門などに配属されるエリートたちは、そこで最先端の知識を身につけ、のちのち民間や政府のリーダーとなっていく。

資本と人材をふんだんに投下し、とにかく自己防衛策に極端なほど敏感な態度に、一番の親イスラエル国であるアメリカ国内でさえ眉をひそめる人も多い。アメリカ内部でも相変わらず

Anti Semetism アンタイ・セメティズム 反ユダヤ派

の動きは年ごとに激しくなるばかりで、全米のユダヤ人口は2.4%に過ぎないのに人種差別犯罪の被害者の半分以上がユダヤ系住民だ。

ホロコーストのスティグマは戦後80年経ってもなかなか拭い去ることは難しい。この歴史がイスラエルの極端な政策の推進力になっているのだろう。

アメリカに点在する原理ユダヤ教徒ハシディック派のコミュニティも、その存在意義は「ホロコーストで失われた600万人の命を補うに十分な子孫を残す」ことである。

このコミュティでは、衣食住全ての局面で原理ユダヤ教の戒律が厳格に守られており、完全なまでの男尊女卑が頑なに受け継がれている。

女性の仕事は男性を支え、子供を産み次世代に尽くすこと、これだけだ。結婚と共に剃髪し、黒い髪のかつらを着用。膝を隠す長さのスカートをはく。男性は長髪に特徴のある長いたて巻きのカールを両耳の前にたらす。黒い帽子にフロックコート。

祭事用の、毛皮でできた大きな円柱形の帽子を被った黒い長いコートの男性たちがつれだってブルックリンのおしゃれ地区で知られるウィリアムバーグ近辺を足早に歩く姿はかなりの違和感を禁じえない。

彼らの目的はただひとつ、失われた命への怒りからくる子孫繁栄だ。

いかに大戦とホロコーストの記憶がユダヤ人コミュニティに大きな傷跡を残したのかがよくわかる極端な例である。

その歴史と傷を背景にした民意と政策で、イスラエルがパレスチナに対し行ってきた軍事重圧や制裁には賛同し難いものもあると感じる人も多い。そんな中でパレスチナの不満がジクジクとつのっていたのは事実であろう。

しかし、穏健派の現パレスチナ政府は、テロ集団ハマスがガザの実権を握り事実上政府として機能していたことを苦々しく思っており、今回のこの侵攻に加担していたとは思い難い。ISISに占領されたシリアの人たちのようにガザ市民の心情は複雑だったに違いない。

イランが後ろ盾のテロ集団ハマスの今回の侵攻。どう見ても兵士ではない男性たちが旗をかざして街中に溢れ出て今回の侵攻を喜んでいる。どこで手に入れたのか軍隊仕様のライフルを翳した平服の男性たちが雄叫びをあげながらブルドーザーで破壊されたガザとイスラエルの国境を走りぬける。

何も知らなかったイスラエルの国境近くでは、その日ミュージックフェスティバルが開催されていた。そこで命を失った人、そのままガザ側に連行されてしまった人も多いと聞く。

昨夜わたしが胸は張り裂けそうになったのは、出張なのか、16歳と12歳の子供を残して東部にいた母親が、携帯での通話を通してドアが破られ二人が泣き叫びながらハマスに連行される一部始終を聞きながら、何もする手立てがなかったとインタビューに答えているものだった。

完璧なイギリス英語で彼女が言ったのは

Even wars have rules. 戦争にだってルールがあるはずなのに。

狂ったようにライフルを翳し砂漠の国境を走り抜けていく平服のガザの男性たちには、そんなルールは通用しないだろう。イランとハマスというテロリスト集団のお墨付きと金銭的援助を得て、長い間の抑圧を余儀なくされてきた恨みをやっとはらせる時が来たのだという興奮の前にはルールなど存在しない。

深い憎しみに至るまでの歴史について語るには私の知識は足りなさすぎる。パレスチナとイスラエルの両方が抱えた傷の深さに心を痛めるしかできない。

私が一つ確信していることは、これはパレスチナとイスラエルの戦争ではなく、その歴史を理由に人々の気持ちを鼓舞して蛮行に走らせたハマスというテロリスト対イスラエルの戦争だ、ということだ。

ハマスやへズボラのテロ集団を擁護し金銭的援助を与え続けたイラン。誤解を恐れずに言えば、今回はイラン対イスラエルの戦争だと言っても過言ではないと実は思っている。

侵攻のニュースを聞いてから三つ、とても気になっていることがある。

一つはアメリカのイスラエルに対する支援。

ウクライナに軍事支援を続けるアメリカの負担に対し侵攻開始当初の同情や物珍しさが薄れてくるにつれ不満の声も上がり始めており、実際、来年の大統領選に向けては保守党候補者のほとんどがウクライナ支援の見直しを大きな公約の一つに掲げている。

ここにまたイスラエル支援となったら。NATOとの関係性と西側のリーダーとしての義務を重視する民主党にはとても不利な政治的状況は避けられなくなる….。

実は、アメリカ国内に100万人いると言われる

Evangelicals エヴァンジェリカルス キリスト教福音派

は保守党とトランプ支持者の中核のひとつとも言えるグループであるが、この多くは親・イスラエルである。

聖書には、イエス・キリストの復活にはユダヤ人がエルサレムに戻ることが条件と明記されており、個々のユダヤ人に対する心情やイスラエル政策はさておき、イスラエルという国の存続は彼らにとってとても大事なのだ。

そのため、ウクライナとイスラエル、この二国への同時の支援が検討された時には、保守党が大多数の下院ではウクライナへの支持がまな板に乗せられる確率が高いと読んでいる。プーチンの勝率はあがり、そこにEUとの軋轢が生まれるのではという懸念が一つめだ。

二つ目は、ロシアの関与。ロシアへの武器供与を表向きは否定しているイランであるが、この2国の連携は明らかだ。そんな中、ここまで大掛かりな侵攻をどこよりも情報機関に力を入れるイスラエルに感知されることなく行えたのか。ロシアのテコ入れがあったに違いないと私は思うのだ。

この侵攻で、ウクライナから世間の目をそらし、あわよくば大国からの支援の減額につながる。今のままずるずるとウクライナ侵攻を続ければ、そのうち小国のウクライナは息切れする。

アメリカにまたトランプ政権が誕生するまでなんとか持ち堪えれば、プーチンの勝利も夢ではない。このシナリオを考えると、私の中ではロシアが黒幕だろうというのは確信に近い。

三つ目。これは世界中のモラルの崩壊だ。先ほどのイスラエルの母親が言ったように、戦争にだってルールがあったのはもう昔のことになってしまった。何も知らずに寝ている隣国にいきなりミサイルを飛ばし、民間人の犠牲をもろともせず攻撃する。

そんなことをしたら世界から総スカンを食うはず、でもこんなに分断した世界では違うイデオロギーの国から総スカンを食ったってへとも思わない国がたくさん存在できるようになってしまった。

By Fars Media Corporation, CC BY 4.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=138614988

北朝鮮や中国が、ある日突然「もういいや、やっちまえー!別に西側に嫌われたってなんともないもんねー」と日本にミサイルを飛ばしたら?そんなシナリオありえないよーと笑える時代はもう昔のことになってしまったのでは、と怖くてたまらない。

この不穏な世界状況、

It’s hard to stomach  お腹に入れるのが難しい、とても受け入れられない

本当にお腹のあたりを蝶々が飛び回っているかのようなハラハラ感が止まらない。

政治家でも軍事専門家でもない私は自分の理解度の未熟さにも悶々とする。

こうやってこの場を借りて言葉にさせてもらったら少しは気持ちの整理ができるかと思い緊急投稿として書かせていただいた。



“緊急投稿・イスラエル侵攻”. への1件のコメント

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