なんちゃってニューヨーク

普通の人のアメリカ生活


おもしろ英語・バケツの意味が深すぎる

Bucket List バケット・リスト

これは、「死ぬまでにやりたいことのリスト」を意味する。Bucketはいわゆる「バケツ」のことだ。

私のバケツにはファーストクラスで世界旅行するとかアルパカを飼ってみたいとかが入っているが、人によってはラテンダンスを習ってみたい、アフリカに住んでみたい、藤井風くんと晩ごはんを食べたい….など、とにかく夢でも現実的でもいいから、やるぞーと思う事柄のリスト、それがバケット・リストだ。

バケット・リストで印象深いのが、ちょっと前になるけれどオバマ大統領が8年の任期の最終年に行ったユーモア・スピーチがある。

とにかく温和で、肌の色やシリア問題でかなり不公平な批判をされても相手への反撃や批判には出ないことで知られていた忍耐の男、オバマ大統領。

そのユーモア・スピーチでは紹介の人が『絶対に人を悪く言わない大統領ですが、ホントはどう思ってるんでしょうね、今日はそれを代弁してくれる通訳さんをお呼びしました』。

Anger Translator (怒りの代弁者)と紹介された、大統領に似た風貌のコメディアン氏が後ろに立つ。オバマ大統領が聞かれた質問に真っ当な答えをするたびに、コソコソと『馬鹿なこと聞いてんじゃねえよ、言わなくてもわかってるだろ?』『ほんとあいつウザいやつだな』と言葉とは裏腹の本心(多分)をつぶやき笑いを取る。

『任期が終わりに近づいてますが、任期中にやっておきたい Bucket List の内容を教えてもらえますか?』

そしたらすかさず通訳さんが

Bucket list”? or “F**k-it list”?  バケット・リスト、それともファケット・リスト?

**日本語ブログではありますが、Fワードと呼ばれる禁断の単語を出してしまってごめんなさい。旅行でこちらに来られる皆さん、この言葉は相当親しい間柄でないと口にするとかなり顰蹙なので気をつけてくださいネ。親しい間柄でもNGなことが多々ありますので、言わないにこしたことはないです**

F**k it を発音するとファッケットと聞こえ、それがバケットと韻を踏んでておかしい。

もうどうでもいい、やってらんねえ!ほっとけ!みたいなときに使われるのが F**k it だ。

今日のデート、何着ていこうかしら、このドレス?頑張りすぎよねー、じゃあこっち?太ったからダメだわ、こっちも着てみよ。あーダメ、なおさら太って見える。どうしよう、もういいや F**k it!! ジーンズで行くわ!みたいな感じ。

8年間の長く難しい任期を終えようとしていたオバマ大統領、ほぼ毎日 F**k it っていう心境だったのではと推測される。

スピーチでは、Fリストなら相当長いですよ、というような対応をしてまたまた笑いと取っていた。

おっと Fワードの話じゃなかった、バケット・リストの話だ。

この言葉を初めて聞いたときは、自分が持ち歩いているバケツの中にやろうと思って大切に入れてある項目だからかな、と解釈していた。

リンゴ狩りのときに使う、クラシックな木のバケツを下げて人生を歩いている、そんなビジュアル。

だけど実はこれ、英語の表現

Kick the bucket  死ぬ (直訳は「バケツを蹴っ飛ばす」)

から来ているのだ。

My grandfather finally kicked the bucket at age 96. じいちゃん、96歳で大往生したよ。

というふうに使う。

なぜに「バケツを蹴っ飛ばす」が「死ぬ」になるの?

調べましたよ….

複数説ある。

最初にこの言葉が「辞書」に登場したのは1785年。辞書と言っても

Dictionary of the Vulgar Tongue お下品な言葉集

という名のスラングをまとめた本に出てきたという。Vulgar はお下品、Tongue は言葉。学校では「舌」と習うけれどこの場合は言語、言葉、という意味になる。

その次は1823年刊のスラング集に姿を表しており、これらによると(貧困のため?)首吊り自殺をする人が踏み台にしたバケツを蹴っ飛ばして息絶えるから…..というなんとも可愛くないどころか、ゾッとしない語源だ。

ちなみに1785年は日本は11代将軍徳川家斉の時代。ほとんど唯一の超・健康な将軍と言われ53人の子供を遺した人である。すごい数だ。それはおいといて、

現代、オックスフォード大辞典の解釈では、バケットはイギリス・ノーフォーク地方の方言で屠殺場の天井に渡した太い梁(はり)を意味し、この梁に吊るして豚を屠殺したためということだ。

これは人間の死からは距離を置きたいがための作り話っぽい気がする。というのも、このバケット(梁)の語源がフランス語の Buque (左右平衡のバランス)と書いてあったから。

以前のブログに書いた通り、あの時代、外から入ってきたフランス語は主に上流階級や学問の場で広まり、農民たちの間ではまだまだオールド・イングリッシュが主流だったのだ。

屠殺のようなかなり下の階級の仕事とみなされるものにフランス語が取り入れられるとは信じがたい….と言語学者でもなんでもないオバちゃんは思ったからなのでした。

いずれにしても可愛くない (・_・;) 語源であることは確かだ。

もう少しきれいめの解釈は、カソリックで死の床にある人の足元に教会から運んだ聖水のバケツを置き、家族や友人が死にゆく人をその聖水で清めたから、という説。

ワタシ的に一番好きなのは、ヤギさんのお乳を苦労して絞ってやっとバケツいっぱいにしたのに、それを当のヤギさんが蹴っ飛ばしてしまい残念な結末になった、というお話。これは16世紀ラテン語で書かれた文献に出てくる逸話のようだ。

1600年後半から1700年前半、ジャマイカに連れてこられた黒人たちの言葉に「死ぬ」を意味する「Kickaleboo キッカレブー」という言葉が記録されている。

それ以前に、アフリカのガーナで「Kickativoo キッカテヴー」という「死ぬ」または「カヌーが転覆する」を意味する言葉が記録されているので、アフリカからきた黒人が使った「キッカレブー」からそれと語感の似た Kick the Bucket が同じ意味で定着したのでは、というアメリカ英語の研究文献もあるらしい。

古くは労働者がその日の食べ物をバケツ型のお弁当箱に入れて持ち歩いていたことから、バケツを引っくり返して食べるものが無くなってしまった、という意味から来ているという人もいる。

ヤギのお話が一番好きではあるけれど、諸説聞いてしまった今となってはなんとなく、踏み台にしたバケツを蹴っ飛ばしたという由来が一番強力な気がする….。

今日やること、今月やることの項目を紙やノートに書き出すもの、それは Bucket List ではなく To-Do List だ。

To-Do List は「やらないといけない」ニュアンスが強いが、バケット・リストの方は「やらないと後悔してしまうもの」のリストである。

定年近くなって慌てて Bucket List を作る人が多いかも知れない?が、若いうちから夢を描いて、現実的じゃないかも、と思うことやかなりの大冒険でもバケツに入れて繰り返し眺めては確認していたら、脳の97%を占めるといわれる無意識の領域に知らず知らず刷り込まれ、人生がじゃじゃーんと大化けしてくれるかもしれない。

私としては、ファーストクラスで世界旅行の夢は初めてアメリカ留学をした20代の頃からしつこく持っているものだから、もうそろそろ叶ってくれてもよさそうなものだと期待しているんだけれど。

最近は自分のバケツの中をのぞいてみるのを忘れてた。これは寝る前にお布団の中でやるととっても楽しい作業。間違えてファケットのほうを覗かないようにしないとネ。



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About Me

ニューヨークから40分南に下ったニュージャージー州から発信。だから「なんちゃって」ニューヨーク。マンハッタンのおしゃれな情報をお探しの方は他にたくさんブログがありますのでそちらをご参照くださいね。元・MBAの仕事人、在米約30年のアラ還。アメリカ人の夫とエンプティネスト元年を満喫中。わんこ3匹で毎日がわや、普通の人のアメリカ生活の記録です。

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