世界情勢も国内情勢も、なんだかしっちゃかめっちゃかの感のあるアメリカ。大統領選は半年先に迫っている。
最近のアメリカを覆う不穏な黒雲について書いた昨日のブログの最後に触れた、アメリカン大学政治科学教授の
Alan Lichtman アラン・リクトマン氏。
アラン・リクトマン教授(ウィキペディアより)By United States government, Department of State – http://fpc.state.gov/136240.htm, Public Domain, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=15910204
彼は過去40年間の大統領選の結果をほぼ全部言い当てている「大統領選のノストラダムス」と呼ばれている人物だ。特別な水晶玉やタロットカードを使い、候補者の生まれた日の星の配置を深く分析し勝者を正確に言い当てる……わけないじゃん!
リクトマン教授が水晶玉の代わりに用いるのは、
Thirteen Keys サーティーンキー 「13の鍵」
と呼ばれる自己開発の大統領選結果予測モデルである。地震観測に用いられるデータ分析モデルを元に作られているという。勝利を左右する要因を13の「問い」に絞って候補者の強弱と現在の国の様子を分析し、1項目でも多く有利なほうが勝つと断言する。きっと近年はAIもノストラダムス教授のお手伝いをしているのだろうね。
その前に、大統領選挙の集計方法について
リクトマン教授は、過去40年間、10の大統領選のうち9つを正確に予測した。たったひとつ外れてしまったのは2000年のブッシュ対ゴア。
クリントン政権の副大統領を務めたアル・ゴア氏は国民の信頼も人気も高く、モニカ・ルインスキー事件で、すわ弾劾!の瀬戸際に立たされ大統領職どころじゃなかったおバカなビルをサポート、その微妙な時期も民主党人気を落とすことなく乗り切ったこと、そして環境問題に明るく、ビルと同じく円満外交の腕に長けていることに対する評価が高かった。イケメンだしね。
2000年大統領選時のゴア wikipedia.org
大統領選の全国得票数はゴアがブッシュを50万票も上回っていたのだが、だから勝ちぃー!とすんなり行かない大統領選。
保守党が強い過疎州と、民主党が強く人口密度の高い東西海岸州では一票の重みが違ってくるし、その重みも反映される仕組みになっているのが大統領選に採用されている「選挙人制度」。
Elector エレクター(選挙人)とは
選挙「人」といっても別に手足のある人間ではなく、各州の「持ち札」って感じ。比率配分の数式を用いて人口一人当たり平等に割り当てられた各州の議席数によって決まる持ち札の数は、カリフォルニア州が53と一番多く、テキサスの40、フロリダの30、ニューヨークの28が続く。
1872年(1972じゃないよ、1872だよ)以来、この選挙人制度では
Winner-Take-All ウィナー・テイクオール 勝者総取り
方式が用いられている。150年前だからさ、見直したほうがいいんじゃ???と常に思うこの総取り制度。例えば100票のうちA候補の得票数が51、B候補が49だったとする。選挙人を51対49の比率で獲得するのではなく、たった2票の差でも票が多かったA候補が選挙人を全て獲得することになる。
だから保守州テキサスでバイデンが頑張って49%の票を獲得したとしても51パーセントのトランプが総取り、40選挙人をかっさらって行ってしまうことになるんさ。いかがなものか。
総取りした選挙人数が州ごとに加算されていき、全国で合計538選挙人の過半数270人を獲得した時点で勝利となる。
2000年の選挙では、フロリダ州でゴアとブッシュの得票数が僅差すぎたため再カウントとなった。きちんと穴が空いておらず機械が読み取れなかったパンチ方式投票用紙が続出しており、そのまま手作業でのカウントを続けるとゴアの勝利は間違いないとされていた。しかしそれ以上選挙を長引かせることは民主主義の「選挙の公正性」を疑う余地を与えてしまうことになる、とゴアは敗北宣言。ブッシュ政権の誕生となった。
この経緯を考えると、ノストラダムス教授リクトマンさんは過去40年間の大統領選結果を全て正しく予想していた、と考えていいように思う。
確定州とスイング州
ただやみくもに支持者を増やすより選挙人の数の多い州で票を伸ばした方が効率的だし、票格差を考えると人口が低いマイナー州でも無視できないところもある。これを各陣営は選挙の最小単位である「カウンティ(郡)」ごとに緻密に分析し、大統領選で訪問する場所やお金を使う州の優先順位とスケジュールを決める。きっとAIが大活躍だね。
歴史的に保守州のフロリダとテキサス、リベラル(民主)州のカリフォルニアとニューヨーク。これらの大きな州の選挙結果はブレることはまずないが、どっちに転ぶかわからない「スイング州」。今年はペンシルバニア、ノースカロライナ、ジョージア、ミシガンあたりの勝敗が最終結果をおおきく左右することになる。選挙人数も多いので両候補大統領選後半には頻繁に足を運ぶことになる。
さて「13の鍵」とは
選挙結果を決める仕組みについて長く説明してしまったが、このあたりをわかっておいていただくと、今日からの大統領選観戦がググッと楽しく?なるハズ。お祭り騒ぎにギャンブル的要素のスパイスがふんだんに振り掛けられた大統領選、4年ごとにアメリカ中が大コーフンするのも当然と言えば当然だ。
大統領選が好きで好きで仕方なかった?リクトマン教授
リクトマン教授、実は子供の頃から大統領選オタクだったのではあるまいか。先々月の皆既日食のとき、過去70年間、各地の皆既日食を求めて旅を続ける92歳の男性が紹介されていた。日食なら知らないことはない!という。この日食おじさんの大統領選版がリクトマンさんだ(多分)。
13にしぼられた「鍵」自体はあれ?と思うほど簡潔な項目ばかり:
- 現在大統領を出している党(現在はバイデンの民主党、以下与党)の下院議席数が前回の中間選挙時より増えているか(これは党の全国的な強さの目安になる)
- 与党の大統領候補に同じ党からの強力なチャレンジャーがいるか
- 与党の大統領候補は現職の大統領か(現在のバイデンね)
- 第3党(民主、保守党以外)から強力な候補者が出ているか
- 経済状況(短期)大統領選時にリセッションかどうか
- 経済状況(長期)過去8年と比較して経済が成長しているか
- 現政権がメジャーな国内政策の変更を行なったか
- 現政権の任期中に大きな社会的混乱があったか
- 現政権に大きなスキャンダルはあったか
- 現政権が外交・軍事問題で重大な失敗を犯したか
- 現政権は外交・軍事問題で大きな成功を収めたか
- 与党候補(これはバイデンね)にカリスマ性があり、国民的英雄かどうか
- 野党候補(トランプ)にカリスマ性があり国民的英雄かどうか
以上。割と素直な質問群ではないか。うーん、質問の13。トランプは英雄では「絶対」ないが、あのフォロワーたちの熱狂を見ると妙なカリスマ性はあるのか!?!?ガタイは相当でかい。
リクトマン教授はトランプのカリスマ性、どう思っているんだろう?質問の12、現職大統領バイデンのカリスマ性については「ノー」とはっきりおっしゃっていた。レイバンの真っ黒のサングラスをかけて頑張ってもだめだったか、バイデン!どこかでカリスマ性を買ってこーい!
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