なんちゃってニューヨーク

普通の人のアメリカ生活


インポスターと角笛

来週、友人宅に4匹目のワンがやってくる。数ヶ月前に14歳のハーマンくんが老衰で亡くなり、現在は盲目で聾唖の大型犬カール、そしてチャック・ニックという虐待経験のある兄弟犬の3匹。このニックが、気弱な兄のチャックを守るためなら何でもするというワンで、小さい体で誰彼なく襲いかかるのでお世話には大変なエネルギーと忍耐を必要とする。

足腰が衰えた超大型犬ハーマンくんのお世話も最後の半年は「凄絶」カテゴリーに入るほど大変だったので、流石にあーちょっと楽になったヮと息をついているのかと思ったら、とんでもなかった。

彼女がいつも保護犬を探すのは、ニューヨーク州にある

Special Needs  特別なニーズ

を持ったワンニャン、通常の団体では避けられてしまう難しい条件を抱えた可哀想な境遇の動物たち専門の団体だ。だから新しいワンを迎える時点で、彼女はそれからの大変さを十分にわかっていて、というかわざわざその大変さを自分で探して飛び込んでいく、という勇敢さと底抜けの思いやりを持っている。

うちも一応保護犬なんだが

我が家の3匹のうち、長女と次男は保護犬。長女はガリガリの虫食われ、とんでもない状態で保護されたらしいが蓋を開けてみればなんと100%スタンダードプードル、という元・お嬢サマだった。次男に至ってはマンハッタン、アッパーイーストサイドの高層マンションでお育ちになったが、あまりのやんちゃに都会は向いていないと判断され泣く泣く田舎にやってきた。獣医さんという元飼い主さんにもちゃんとお世話をしてもらっていたので、精神的傷といったものはまったくないどころか誰よりも偉そうにしている。

次男:「オイ、手を休めずになでろよババア」

過去がわからない保護犬はまあ、ギャンブルではあるが、我が家のように家族のアレルギーで毛が抜けないワンしか飼えないというような家にやってくるのはやはりプードル系、性格的に扱いやすいワンが多い。虐待経験があるワンの更生は難しく避けたいと思うし、あとわずかの命という難病を抱えたワンも辛くて嫌だと思う。

私の最後の勤務先は動物保護団体で、動物たちのウェルフェアには人一倍敏感な方だが、友人のように「うちには余裕があるからあと一匹だけでも」と自宅に招き入れるこころの広さがあるかと言われれば微妙だ。

youtubeやインスタでネグレクトされた動物たちのレスキュービデオを見ては泣き「一体誰がこんな事するよ!」と怒るけれど、さて、じゃあこの大変なワンのお世話を24時間お願いしますね、もちろんそれにかかる費用もあなた持ちですよ~と言われたら…..。だめ、無理かもしれん….。

私の中の「インポスター症候群」

だから来週友人宅に来ることになっている4匹目、デイジーちゃんの写真を見せてもらいながら頭に浮かんだ言葉が

Imposter インポスター ニセ物、ペテン師

だった。私の友人が本物の動物フィランソロピストとすると、私はそのなんちゃって版、ということだ。

けっしてイジけて言っているんじゃないよ、こんな野放図な保護犬ペアの長女と次男だってあやうく天国送りになるのを防いであげられた。でも、上には上がいる、というか、感嘆してしまうような行動を取れる人というのがいるもんだなあ、と思ったわけよ。

こうやってブログをたくさんの方に読んでもらい、ほそぼそと物を書いてお金をいただく仕事をするようになったが、職業は、と聞かれて堂々と胸をはって「ライターです」とはどうしても口に出せないぞ。

「翻訳家」?うーん、まあ、こっちは経験も割とあるし、言えなくもない….か?が、私の仲良しは、フルタイムの仕事をしながら新宿の翻訳・通訳学校に何十万も払って通い、現在その仕事で独り立ちしてしっかりやっている。おばちゃんはそんなちゃんとしたやり方で翻訳家になったわけじゃないし?コレもなんちゃって版な気がする。

重ねていうが、けっしてイジケて「私は偽物なんだわ…..。」と言っているのではない。人生いろいろ人さまざまだ。なんというか、私の気持ちの持ちよう、というか。ホントの本物でなければそれを名乗ることは許されないのでは、と思うキビしめの感情。これはもしかして昭和なのか?令和の今では時代遅れか?

少なくともアメリカでは自分が「何をしてきたか」「何を成し遂げたか」「私はこれがオハコ」ということのリストをいつも手元においておき、オンデマンドで自己アピールできるということがとても大事だ。日本だって特に職場ではそうしなきゃいけないんだろうが、それにかなり

Humble ハンブル 謙虚

または

Modest モデスト 控えめ

のふりかけがかかる。日本で「私はあれしたの、コレもできるの、これも得意だし、それからあれも」とフィルターかけずに言ったらまわりの反応が微妙だろうと思うが、はっ!もしかしたら令和の日本はもうちゃうんやろか?

アメリカにも実はたくさんいるらしい自己過小評価組

アメリカでも最近

Imposter Syndrome インポスター症候群 「自己過小評価」症候群

という言葉を以前よりもずっと多く目にするようになったと感じる。本もたくさん出てる。おどろきおどろき!深く知り合うまで弱みは見せないし、職場ではみんな「アレできるコレできる」のオンパレードだ。週末に行ったのよ、という場所だって、話を聞いていればとてつもなくゴージャス。

そんなアメリカ人にも「私は偽物っぽいわ….いつかバレるんじゃ」と心の奥底に抱えている後ろ暗さがあるんだ、そして、それがトレンド入りするほど

Common コモン ありがち

なものだったとは。周りに「アレできるコレできる」系の人が多いだけに、お母さんのお腹の中で自己確信の量を少なく配分されて生まれてきた人たちには、日本にいるよりももっと切実な問題なのかもしれん、と思い至った。

角笛の吹き方

ハンブル、モデスト、インポスター症候群の真逆にあるもの、それが

Blow My Horn ブロウ・マイ・ホーン 「俺様の角笛を吹く」

だ。大きな水牛のツノでできた角笛でもキラキラ金色に光るフレンチホルンでも何でもよいが、「ぼおおおおおおおおおおおんんんん」とちょっととぼけたバカでかい音のでる管楽器、これを一生懸命に吹いて自己アピールにいとまがない様子。

Dictionary.com から引用の例文はこちら👇

“Although usually modest, Marilyn had to blow her own horn a bit during the job interview.”  普段は控えめなマリリンだが、仕事の面接では多少自分の角笛を吹かなければ(自己アピールをせねば)ならなかった。

こういうビジュアルな英語表現は楽しいね。ちなみに、イギリス英語は角笛でもホルンでもなく blow my trumpet トランペットだそうだ。英米どちらの英語でも Blow のかわりに「らっぱをピューと吹く」という意味の Toot「トゥート」が使われ Toot My Horn となることもある(けどあんまり聞かないね)。ちなみに、

Toot! Toot!

これは汽笛の音、チュッチュー!!である。いずれにしても「うるさい」ってことか(笑)。



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About Me

ニューヨークから40分南に下ったニュージャージー州から発信。だから「なんちゃって」ニューヨーク。マンハッタンのおしゃれな情報をお探しの方は他にたくさんブログがありますのでそちらをご参照くださいね。元・MBAの仕事人、在米約30年のアラ還。アメリカ人の夫とエンプティネスト元年を満喫中。わんこ3匹で毎日がわや、普通の人のアメリカ生活の記録です。

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