なんちゃってニューヨーク

普通の人のアメリカ生活


ダライ・ラマに会ってきた(その二)

今夜、EST Eastern Standard Time 東部標準時間)21時からトランプ vs. バイデンの一騎打ちディベート討論会が行われる。

バイデンに至っては先週の金曜日からキャンプ・デービッド(大統領専用保養地)に缶詰めで準備に余念がなかったというから、ギリギリまで体重を絞った計量前のボクサーのような緊張感で今夜に挑むに違いない。

この討論会に向けて、トランプは各地の集会でこれまで通り、バイデンをボケおやじ、「もはや人間の抜け殻」とあだ名を付けてこき下ろし続けている。支持者はバイデンの顔の横に「弾劾してもいいよ、どうせ覚えてないから」と印刷されたシャツを着て、バイデンの言い間違いや歩く姿の頼りなさをあざ笑う。見ているだけで胸が悪くなるような程度の低い「いじめ」で集会が盛り上がる。

ここ数ヶ月でバイデンの老いは加速したように見受けられ、もっと他に民主党に若い候補はいなかったのか、と今年の11月本戦を前に不安になることしきりだが、大衆が集まって老いをからかい、人間性を貶めるような言葉を熱狂的に大合唱するのとは別問題。小学校でさえ許されない行為だよ。目を疑う。

ヨガや瞑想に少しでも興味のある人なら

Compassion  コンパッション、思いやり

という言葉はよく使い、よく耳にする言葉であるが、この「コンパッション」の最高峰、The Most Compassionate Man in the World (世界一思いやりのある人)と呼ばれるダライ・ラマ法王を一目見ることができた、と先日のブログに書いた。

著書をすべて読んだわけでもなく、YouTubeで公開される説話を熱心に視聴していたわけでもない私がダライ・ラマに会いに行くというのは半分以上がミーハー根性であったことは否めないが、以来ダライ・ラマの著書を引っ張り出して来て熱心に再読している。

読みながら、トランプの犯罪や振る舞いのその根底にあるものは、結局このコンパッションの欠如だ!と実感するに至ったわけよ。独裁者になり限りないパワーを手に入れたい、という自分勝手な彼の動機はどう見ても明らかなんだが、反対側からはきっとそう見えないのだろう、それが不思議でならん。反対側に行ったことも行く気もないのでこれは永遠の謎で終わるのだろうて。

今まで一番印象に残っていた書籍 The Book of Joy のコンパッションの章を読み返した。

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これはダライ・ラマ法王と、反アパルトヘイトの人権活動家として知られる南アフリカのデズモンド・ツツ大司教が共に過ごした一週間の会話をすべてまとめた本。

コンパッションのコンセプトをここで私がうまくまとめるのは不可能だが、人の気持ちに寄り添うこと、自分だけが良ければそれでいいと考えないこと、そして人の苦しい状況を心から痛ましいと思える心だろうか。この本によると、古代ヘブライ語でコンパッションを表す言葉の語源は「傷」だそうだ。人の傷を自分の傷のように感じ、手を差し伸べたいと思う心。

人の手助けをしているときには脳に興奮物質のエンドルフィンが分泌され、

Helper’s High ヘルパーズ・ハイ 手助けをしている人がハイになる

という状態に入り、幸せホルモン、オキシトーシンも分泌される。母乳を与える時に母親の脳に分泌されるのと同じホルモンだ。ボランティアをしたり人のためにお金を使うと、またはその事を考えるだけで体内の免疫抗体の上昇が観察され、血圧が下がるという。

人間は元々、人とつながり、コンパッションを持つように脳と体の回路が接続されていることが脳科学的に証明されているのだ、とこの二人が熱弁する。

それではなぜ、各地で戦争が起き、日常生活のレベルでも多くの人が生きづらいと感じるほどコンパッションが欠如しているのか、という質問が出てくるんだけど?その答えはご自分で本を読んでください。

といいたいところだが、拙いなりにお二人の発言をまとめさせてもらうと(汗)、ダライ・ラマ法王が、アル中だったというツツ大司教の父の例をあげ、「お酒を飲まなければいい人だったというツツ大司教のお父さんのように、人間はまあ、強欲、競争など、近代のある一定のライフスタイルや考え方に酔っ払っていて本質を発揮できていない状態とでもいいましょうか」という。

ツツ大司教も弱肉強食の考え方が深く染み込んでしまっていることに触れ、「あなた達宗教家がそうおっしゃってくれるのはありがたいが、さしあたって今日オレはお金を稼ぎ家族を養わなきゃいけねえんだ!」という人たちも身の回りの小さなところからコンパッションを駆使して、まわりの小さな変化を経験するところから始めてみてはという。

ふむ。書いていてもとても抽象的に聞こえるよ…..。社会の構造自体が競争ベースだからね。一人ひとりの小さな変化が抗生物質のように即効で効いてくれると良いが、まあそうはいかまい…..?。

よく言われるように、トランプは「原因」ではなく「現象」だ。彼を産み、彼を受け入れる土壌がこの社会にあった、ということだ。それを立て直すには、次世代の教育しかない、とダライ・ラマは何度も繰り返す。

ダライ・ラマの80歳の誕生日に、彼の居住地インドのダラムサラをツツ大司教が病を押して訪問し実現したこの1週間は、最後は今も弾圧が続くチベットから逃れてきた子どもたち2000人が学ぶ Tibetan Children’s Village School チベット子供村学校での盛大なバースデーパーティで締めくくられた。この学校では、次世代のチベット、そして世界を平和的に引っ張っていくべき人材を育てるべく日々の教育が行われているという。

このパーティの様子はyoutubeで見ることができる。

と、ここまで書いて一体何がいいたかったのか自分でもよくわからんようになってきたが、とにかく、なんとかしなきゃという状態だ、この世界。このアメリカは、まずはトランプが大統領になるのを阻止するところから始めなくては。独裁者の台頭と宗教が政治に関わることの危険はもう2000年前からはっきりと証明されているのだから。

仏教家とキリスト教の大司祭は宗教を超えた大親友、「お前は英語もろくに喋れないくせになんで1万人もの人が話を聞きに集まるんだ?」「お前さん、ちょっと瞑想し過ぎなんじゃないの?」とことあるごとにお互いをからかい合う二人。デコピンあり、ほっぺをつねる、「でかい鼻だなあ」とツツ大司教の鼻をつまむ、なんでもありのおちゃめな一週間に散りばめられた会話はキラキラの深ーい教えでいっぱいだ。

その教えの部分だけが詰まった書籍というのは、読んでいるうちについ船を漕ぎ、手に持ったコーヒーカップが傾いてスカートにシミを作ったことが何度もあるが、この二人のツッコミ合い。あまり「慈悲の心」「平常心」「隣人への愛」だのいうスピリチュアルキーワードに親しみがない若い層にもとってもとっても読みやすい本となっている。日本語訳も出ています。

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ニューヨークから40分南に下ったニュージャージー州から発信。だから「なんちゃって」ニューヨーク。マンハッタンのおしゃれな情報をお探しの方は他にたくさんブログがありますのでそちらをご参照くださいね。元・MBAの仕事人、在米約30年のアラ還。アメリカ人の夫とエンプティネスト元年を満喫中。わんこ3匹で毎日がわや、普通の人のアメリカ生活の記録です。

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