ニューヨーク、ケーキ、で検索すると必ずトップに名前が出てくるのがトモコ、チカ、ヨシエ、そしてアヤコ、という日本人女性の名前たち。ニューヨークで活躍する日本人女性パティシエたちの名前である。
かとうともこさんのPatisserie Tomoko パティセリー・トモコ、ティルマンちかさんのChikalicious チカリシャス、しらかわよしえさんのPatisserie Fouet パティセリー・フーエ、くろかわあやこさんの Burrow Bakey バロウ・ベーカリー。
アメリカではお目にかかれないフレンチ風の繊細な日本のケーキが大人気で、Time Out などニューヨークの情報誌やFood and Wineといった本格料理雑誌にも皆さんよく取り上げられている。
チカリシャスは神楽坂にチカリシャスNYアマリージュという支店を出していらっしゃるので、ニューヨーク風にアレンジした日本のケーキ、逆輸入という感じなのだろうか。日本に帰ったらぜひ行ってみたいと思っている。
昨日は、ブルックリンのウィリアムズバーグ地区にあるかとうともこさんのお店、パティスリー・トモコに初めて行ってきた。
週末だけメニューに載るというケーキのプリフィックス・コースが目的。もちろん単品のケーキも美味しそうなのだけれど、アミューズブッシュ、メインコース、そして最後を焼き菓子のペティフォーでしめくくるというこのコース、どの情報サイトで読んでも手放しの5つ星。

そしてサイトで見るとトモコさんのお店は全部カウンター方式で、目の前で作業するトモコさんや他のシェフが作り出すケーキの数々を目で楽しみながらケーキをいただけるという豪華版。美味しいコースを頂きながら、私の目は黙々と作業を続けるトモコさんの手に釘付けだった。

(くしゃみをしたら申し訳ないくらい至近距離での作業。)
トモコさんはカウンター下の冷蔵庫を開けるとシリコンのベーキングシートを取り出した。クリームを入れてサンドイッチになる前の、焼き上がったままの形のつやつやのマカロン。綺麗に揃った薄ピンクのマカロンはきっと桜の味。その下の段には同じマカロンだけど直径が30センチくらいあるものも一緒に冷やしてあった。
マカロンの台を使ったホールケーキにになるんだな、とピンときた。大きなマカロンケーキを小さなマカロンできっとデコレーションするんだ❢
トモコさんは顔くらいの大きさのマカロン台を丁寧にシートから剥がしてデコレーション台に置いた。横の大きなボウルからひしゃくいっぱいの白いクリームを掬い上げると、絞り袋に入れてしゅっと空気を抜く。袋のてっぺんをくるくると鮮やかに捻り上げて、さて、という感じでマカロン台にクリームを絞り出し始めた。手元に狂いが全くない。流れるような動き。
瞬く間に可愛らしいキスチョコの形をしたクリームのサークルができた。白いクリームの間に等間隔に真っ赤なラズベリーをはめ込んでいく。薄いピンクのマカロン台に真っ白のクリーム、そして真っ赤なラズベリー。
クリームが緩まないよう絞り袋を冷蔵庫に入れると、今度はボウルに山積みになっているつやつやの真っ赤なイチゴをひとつづつ左手にひろいあげ、右手のペティナイフでへたを取ってちょっちょっちょっと小ぶりに切っていく。切ったはしから白いクリームに囲まれたサークルの中にランダムに並べていく。
いちごの次はラズベリーとブルーベリー。冷蔵庫からクリームを出してくるくるとフルーツの上に伸ばしていった。その上にもう一枚のマカロン台が置かれ、いよいよデコレーション!と息を呑んだところで、注文のケーキを受け取りにきましたというお客さんが入ってきた。
手渡す直前までとっておいたのだろう仕上げにかかることに。最後の仕上げを見たかったマカロンケーキは大事に、大事に冷蔵庫へを移動させられ、そのかわりに大きな注文のケーキが出てきた。
50センチ以上はあるかと思われる真っ白の四角いケーキ。繊細なレースのような白いクリームのデコレーションで側面が覆われている。トモコさんがそのケーキをとり出した時にはカウンターにいる人からもそのお客さんからも「ほおおお」というようなため息が聞こえた。トモコさんは先ほどのボウルから一つ一つていねいにいちごをつまみ上げては形を揃えながら並べていく。
型紙なんかないのだ。トモコさんの頭の中だけにデザインがしっかり入っている。いちごの合間にブルーベリーとラズベリーをちょこちょこと間隔をおいて広げていく。マイクログリーンにシロップをブラシで塗って飾りを仕上げ、赤と紫のフルーツの間にアクセントになるようおいていく。
飾り付けが終わったら今度は、フルーツの隙間に側面と同じレース模様を描いていく。ちゅっ、ちゅっと直径が多分3ミリほどしかない小さなしぼり袋から細かいクリームの曲線が描かれていく。
ケーキを注文した男性がまばたきもしないでその様子を見守っていた。出来上がったケーキに感嘆の声を漏らし、写真を撮って家族に「こんなケーキができたよ」と送っていた。
(こんなケーキもトモコさんのインスタで見つけた)
家族のためにパンもお菓子も焼くけれど、実用一本やりの私のケーキたちとは別世界のお菓子。頂いたケーキのコースも最高に美味しかったけれど、私は美しいお菓子が出来上がっていく過程に夢中でそちらの方に忙しかった。写真を取らせて下さい、とお願いするのも気が引けるような静かな真剣さに圧倒された。
自分でパティシエになって美しいケーキを作りたいという気持ちもないではないが、どちらかと言うとルネッサンス期のメディチ家のように素晴らしい才能の芸術家たちのパトロンとなり毎日出来上がっていく美しい宝石のようなケーキを眺めて暮らしていけたらどんなにいいかと思うのだ。

最後に、これが私のメインコース「Ichigo Macha Gardenいちご抹茶ガーデン」の中のマスカルポーネのチーズケーキ。苔むせた小さな池のような抹茶のペーストがケーキを縁取っていて、茶色の「土」は黒砂糖に白ごまの香りがした….



コメント
→ルネッサンス期のメディチ家のように…。
同意です(笑)
私もそうなりたい…。
オープンキッチンのお店は多いけど、すごいオープンですね。
製造の過程も作品なんでしょうね。
そして、最後の写真のマスカルポーネのチーズケーキ、斬新ですね!!
ケーキって一種の芸術だと思いますが、まさに芸術作品!!
発想もすごい(≧▽≦)
コメント頂いてたのに気が付かなくてごめんなさい!札幌の素敵なホテルのお話を拝見して私もコメントしたいと思っていたところです。
オープンとは聞いていましたが、手を伸ばしてケーキを盗める距離(笑)でもじっくりと工程を観察できて嬉しかったです。
ほんとに芸術だなーって思います。食べるのもいいけど目福目福(ΦωΦ)
いえいえ、ありがとうございます(^^)/
工程が見れるってそれだけで楽しいですからね~。
機会があったらトモコさんのお店へ行って、作ってる状況をずっと見てたいです(^.^)