国連総会・高市首相のスピーチの評価は?(その1)

世界情勢・政治
高市首相の「デキる人フィルター」

TBSドラマ「Tシャツが乾くまで」の中で、主役の咲子が口にする「好きな人フィルター」という言葉があった。好きな人のことなら何でもよく見えちゃう、という感じの言葉だと解釈したが、高市首相には「好きな人フィルター」と似た「デキる人フィルター」というのがかかっている、と国連総会のニュースを見ながら感じた。

ニューヨークでの総会に集まった世界中の首脳たちが、男女格差が大きいとされている日本で女性首相になったくらいの人なんだからとんでもなくすごい手腕を持った人に違いない、この愛想の良さの後ろにはものすごいなにかがあるに違いない、と思っている。

「フィルター」だけで本人は大した事ない、と言っているのではありません。こういう自動フィルターのおかげで一目置かれて発言の重みが増す、というのは日本にとってかなり有利と感じた次第。言っちゃなんだが、グレーのスーツを着た退屈なおっさん首相たちよりもインパクトがあって動画にも取り上げられやすいし、日本の主張がより明確に世界に伝わる、と、そういうことです。

高市首相のスピーチの内容

スピーチは、ドイツやスペイン、フィンランドの首相たちと並んで国連改革の必要性を強調。日本の路線を再確認の予想通りの内容でうまくまとめられた極めて真っ当なスピーチだった。

「80年間平和を維持し、世界の平和と秩序に大きく貢献してきた日本は、これからも「法の支配」(ICC 国際刑事裁判所とかね)を尊重する路線で行きますし、今後も頑張って貢献しますネ」と言うのが基本のメッセージで、20分のスピーチに「平和を愛する国」(英語でPeace-loving Countryと訳された)という表現が少なくとも4回は使われた。スピーチの中で唯一使われた日本語の固有名詞は「ヒバクシャ」(あ、あと「安倍晋三」も。しつこいな)。

具体的な提案としては、1945年制定の国連憲章は古すぎるから見直して、

  • いい加減に「敵国条項」完全廃止してちょうだいな
  • 安全保障理事会の常任理事国の国の数増やして日本も入れてください

との主張があった。

第二次世界大戦の悪者、ドイツと日本ほか数国は「敵国」で、この人たちが悪いことを始めたら国連安保理の許可なしに攻撃していいですよ、ということになってたんだが、それはさすがに2000年のはじめごろ死文化して、でも「敵国」レッテルは剥がしてくれなかったんである。

中学で習いましたが「安保理」だの「常任理事国」だの

無理やり暗記させられた記憶しかない「安全保障理事会」や「常任理事国」らのワードですが、平和時にはアタマに浮かんでも来ないこれらのワードの重要性がひしひしと感じられる昨今。世界がこんなにヒッチャカメッチャカになってきてるんだから、国連なんでしょ、なんとかしてくれないの???という感じである。

国連の中で、世界平和を維持する目的の理事会が「安全保障理事会」で、以下の5つの国が「常任理事国」つまり平和を維持するリーダーとしてこの理事会を率いている。

  • アメリカ
  • ロシア
  • 中国
  • イギリス
  • フランス

改めて見てみると、ウソー?と言いたい顔ぶれ。だって上の三つの国こそが世界平和を乱している張本人ではありませんか。アメリカがきちんとしていたときは、ロシア、中国がとんでもなくてもなんとか危うい均衡を保っていた世界だが、ああ今となっては。最近いちばん問題児なのはアメリカじゃないか(未だに驚く)。

いかに国連が時代遅れかがよく分かるというもんだ。

拒否権持ってる常任理事国

常任理事国には、加入国全部が同意してもこのうち一国でも「だめ」というと決議されないという窮極の「拒否権」というのがある。

紛争が起きたとき「みんなで経済制裁して当事国を牽制しましょう」という提案(例えばイランにかけられた経済制裁、資本凍結。これで資金不足に陥ってあんまり悪いことができなくなっていた)が出てもこの5つの国の一つでも反対すると決議されない。

ロシアがウクライナにちょっかいを掛け始めた頃から何度もロシア制裁の提案があったがそのたびにロシアが拒否権を行使。ロシアはいままでなんと120回以上拒否権を行使している。アメリカは、ガザ問題で提案されたイスラエル制裁の決議を阻止。どう考えても必要な経済制裁や決議を、拒否権を持つ大国が自国の権益優先で阻害する。この大国たちにこういう権利を持たしておくと、限りなくヤバいのだ。ロシア、中国、アメリカだよ?

なんて世界になっちまったんだ。

2年任期の非常任理事国というのがあって日本はそれ何回もやってはいるが、拒否権はないし、どういう仕組みかはよくわからんが常任と非常任では発言権の重みがかなり違うらしい。

国連やめて新しいの作ったら?とも思うがね

人道支援では世界中で圧倒的な影響力がある国連だが、軍事力や国際責任追及となると形骸化して実行力は微力、しかも上で述べた拒否権問題がある。

んで、高市首相がスピーチで強調した国連改革、という話になるんだが、金銭的にも大きく貢献してきた日本とドイツは、常任理事国の定員数を増やして自分たちも常任理事にしてください、というスタンス。インド、ブラジル、アフリカ連合も同じ考えだ。

自分たちは常任理事国にならなくてもいいけど、とにかくあのやっかいな「拒否権」を廃止しましょう、と主張するのがカナダ、フィンランド、スペインなど。

でもこれらは「拒否権廃止の動議に常任理事国が拒否権を発動する」という無限のジレンマに陥り、まず間違いなく実現しない。日本やドイツが主張するようになんとか常任理事国の数が増えたとしても、ヤバい「拒否権」はなくならない。

1945年の戦勝者が未だに主導権を握っているよな体制ではアジアやアフリカの新興国の意向は反映されないし、第一お金たくさん出してる日本とドイツが「敵国」って、時代錯誤すぎる。ま、だから国連以外の地域ごと、国ごとの安全保障条約というのが世界中で結ばれてきたわけなんだけど(NATOとか)、ここにきてアメリカがまさかの寝返り、もう何がなんだかワケワカメ状態になってきてしまったんである。

悪さをするロシア、アメリカ、中国を仲間はずれにしてみんなで新しい組織を作れば?と思わなくもないが、第二次世界大戦のような大惨事のあとじゃなければそれもむつかしい。

…..ちょっと長くなっちゃったので、2回に分けて投稿しますね。高市首相への評価、批判、日本の外交手腕などについて、続きは明日!

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