高市首相の睡眠時間問題
高市首相がフランスのマクロン大統領と初お目見えした際、「ハウアーユー ご機嫌いかが」と聞かれた答えが「昨夜はね、5時間も寝たからスッキリしてます」であった。就任から間もなくいきなりG7やら何やらで世界を飛び回り、そりゃあお忙しいのだろうねえ、とその時は気にもとめなかったが、え、未だに寝てないですと?
睡眠時間0〜3時間のリーダーに国の行く末を決めてもらったりしたくない。怖すぎる。睡眠取れないリーダーは世界中にいるだろうに(ウクライナのゼレンスキー大統領なんか3年くらい寝てない気がする)自らそれをXでつぶやくというのがすでに睡眠不足ゆえの判断の誤り、国民が不安になるじゃん!
思った通り、睡眠時間問題はニューヨークタイムズで大きく取り上げられていた。同日、もう一つ大きく取り上げられていたニュースは、東京や奈良で開催されている「安倍晋三回顧展」。「ある日の午後、東京の静まり返ったホールの中で、日本の高市早苗首相は、射殺された日本の指導者であり自身の恩師である安倍晋三氏の巨大な肖像画の前に立ち、一礼した」で始まる長文記事が一面に掲載された。
彼女が伊勢神宮に遺影を抱いて現れたときにはぎょっとして、「ん?これって日本ではアリなん?」と自分の浦島花子度を疑ったが、最近では「日本国旗に落書きしてはいけません」法令にも違和感を覚え、しきりと「日本、右翼化してんじゃんん??」と気になって仕方ない。
右翼化とは?安倍首相が果たした役割
右翼、右翼、とよく聞くけれど「なんとなくわかる」じゃなくて実際なんだろう?AIに説明してもらった。
右翼の4つの柱というのは、
- 自分の国がいちばん大事(愛国心、自国優先)
- 伝統や歴史、文化を重んじる(保守主義)
- 現実的な力で国を守る(タカ派・防衛重視)
- 強いリーダーシップと結束(一体感)
と、まとめてくれた。
おフランス革命後に、議会の右側に王政派、左側に(ベルばらでおなじみの)ロベスピエール率いるジャコバン派が座ったトコからこう呼ばれるようになったというのはご存じの方も多いと思う。
戦後教育のおかげで、少なくとも日本人の大半は右翼アレルギーであり、世界平和、戦争反対、みんな平等、という考えが体の隅々に染み付いている…というのが世間一般の理解だったと思うが、いや、なんか実はそうでもなかったんだ、とわかったのが第一次安倍政権発足の時だった。韓国の教科書問題だの、中国の相変わらずの日本批判にいい加減イヤ気が差していた日本で「靖国参拝」とか「軍事強化」とかいうワードが、なんか、わりとすんなり受け入れられ始めた。長く続くデフレの閉塞感に「アベノミクス」に期待が高まった。
タカ派(右翼度高い人)で、メディア規制、モリカケ問題、政治献金・統一教会問題…など、今になって考えればプチ・ト○ンプと言えなくもないほど傾向がそっくりの安倍首相だった。トラ○プと違うのは、彼はけっこう実務への評価は高かったという点だ。
なぜ右翼化が危ないのか
上の4つを見ただけでは「自国を愛して何が悪いの?」「強い国を目指して何がダメなの?」と言う声が聞こえてきそう。自分の国の文化や伝統を守る、自分の国を誇りに思う、強いリーダーに帰依して団結する、国としてのアイデンティティや一体感を持つ…、好き嫌いは別として悪いことはない。
歴史的にみて、右翼傾向が強まるのは人々の生活と経済が行き詰まり、「平和」だの「調和」だの、メシのタネにもならないことにかまう余裕がなくなってきたときだ。何が何でも自国優先、戦争してでも自分らの生活をラクにしてくれそうなリーダーの言動に魅力を覚えるようになる。
自分たちの不満を堂々と口にして体制と戦う意気を見せてくれるリーダーが台頭し(これがポピュリズムね)、何が何でも自分らの権益を優先するナショナリズム傾向が進む。これらが右翼化の第一歩、というか、右翼化の素地がガッツリ固まって加速化する準備ができている状態だ。
強いリーダーを中心に一丸となろう、という気持ちは簡単に「熱狂」となり、ヤバ???と気づいた時には異分子を排除するシステムが完成していて、異論を唱えることが危険な行為となり、口をつぐむ人が増える。社会のチェック機能が崩壊する。
フ○シズム化するアメリカがいい見本なんだけど
その恐ろしいシナリオを地で行くアメリカ。トラ○プを先頭に大衆の不満に乗っかるポピュリズムから始まった動きは、第二次政権が中盤に差し掛かった今、法の手続きや選挙などありとあらゆる民主主義のルールが日々姿を消し続けている。
政権に従わない人や組織はこじつけてでも政権から訴訟され、裁判所や選挙の仕組みは根本からゆらぎ、自国権益を優先するあまり戦力を振りかざし、同盟国を侮辱して孤立が進む。各地に移民収容所が建設され、町を私警察が徘徊し「移民に見える」というだけで尋問を受け時には逮捕に至る。単なる保守政治ではなく完全に「フ○シズム(独裁的熱狂)」と呼ぶべき段階に入った。
ヨーロッパでも、既存政治への不満から右派政党が急伸しているが、アメリカの姿を見て揺り返しの動きもまた大きくなってきているよう。実際に住んでいないので実感として把握できないが、ハンガリーの独裁政権が崩壊し、EU諸国の支援でウクライナが大きく戦局をひっくり返したのもこの動きの一環と思う。
今日本はどの段階?
アメリカがここまですごいスピードで右翼化できた?のは、苦しい生活に不満を抱く層の厚さを利用して経済力で政治に介入した一部の超・富裕層の存在がある。みんなを平等に守ろうとする民主主義よりも、自分たちと癒着して税制の優遇と緩い規制を提供してくれる政権のほうが都合がいいからだ。
アメリカ独特のビリオネア土壌が異様さを加速させた。
「自国を誇りに思う」段階から「武力を行使してでも自国を守る」段階に移行してしまうまでの、日本は今どの段階だろう?
「安倍晋三回顧展」に多くの人が詰めかけて靴やらマイクやらの展示物にしげしげと見入る姿。「国旗崇拝」みたいな落書き禁止法案の動き。支持者にとってはカリスマ的ポピュリズムリーダーだった安倍氏の「遺志を継ぐ」と熱弁をふるう高市首相の姿はちょっと信仰的にさえ見える(と思うのは少数派かもしれないが)。
日本は、もともとメディアは「自粛」傾向が強いし、アメリカほど桁外れではないとしても宗教団体など政治献金の母体が政治と深く絡んでいるのは周知の事実。それでも、第二次世界大戦後の日本は、左翼度、右翼度を「1から5」で図るメーターでは常に真ん中より少し左寄り、2から2.25くらいのトコにいたように思う。
今はうーん、3.5くらいまで行っちゃってる感じ?これは統計的裏付けがあるわけではまったくなく、海外から報道をつぶさに読んでいる人(ワタシね)の肌感覚である。高市さんの充血した目と「0から3時間睡眠」で、わたしの気分としては3.7まで上がったか??と感じている。
日本は「手遅れ」になる前に気づけるか
日本は、
- 世界大戦の記憶が引き継がれていること、
- 人々の気質が比較的マイルドであること、
- 異様なまでに歪んだ格差社会ではまだないこと、
- 野党の勢いがある程度保たれていること、
- 社会保障が他国よりしっかりしていること、
- 教育レベルが高いこと、
- 憲法が他国に比べて新しいので完全な時代遅れでないこと、
など、右翼への振り切りに歯止めをかけられる要因はたくさんあるものの、一度場の空気が決まると「右に倣え」と一気に同じ方向へ進み始める危うい傾向もある。ちょっと心配。
「ポピュリズム」「ナショナリズム」「右傾化」……。ニュースや記事でこういう用語が出てきたら「よくわかんないから、ハイ、次、スクロール」したくなるけど、ポピュリズムとは「みんなの不満を堂々と口にして人気を集める強気のリーダーにみんながついていくこと」、ナショナリズムとは上で挙げた「自国への誇り、自国優先」気分がバリバリの状態、と考えるとけっこうシンプル。めんどい表現を脇に置けば、いま日本や世界で起きていることをしっかり言い表してくれる言葉たちだというのがよく分かる。
政治家の難しそうなカタカナ用語や「強い日本」という威勢の良いスローガンに誤魔化されず、「あ、これは暴走のパターンに入っているな」と冷ややかに見つめる目を持つことが大切だと思う。
「右翼化」が絶対的にヤバい3つの理由
最後に、もう一度、極度の右翼化がなぜヤバいのかをまとめたい。
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「異論」を許さない空気になり、最後は息ができなくなる 「お国のため」という熱狂が強まると、政府のやり方に疑問を呈する人や、少し違う意見を持つ人が「非国民」として叩かれる。聞いたことありませんかーーー💦。誰も批判や反論ができなくなって社会のチェック機能が壊れる。
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「ブレーキ」を踏める人がいなくなる 強いリーダーに権力が集中して政治家もメディアも忖度ばかりするようになって、政府がどんなに間違った方向(戦争や経済破綻ね、いまのアメリカですな)へ突進しても、誰も止められなくなる。
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後戻りができない みんな喜んで熱狂に乗ってるうちにいつの間にか権威主義、独裁主義、恐怖性が完成してしまっている。
アメリカの姿をじっくり観察し、日本もそうなってほしいかをよーく考えてほしい、んだが、その前にメディアの報道がなんとも物足りないのが気になる…、というのはまた別の機会に書きたいと思う。
興味のある方のために参考図書
エーリッヒ・フロム「自由からの逃走」
ティモシー・スナイダー「暴政・20世紀の歴史に学ぶ20のレッスン」
リンジー ストーンブリッジ「ハンナ・アーレントのように考える 私たちには世界を変える自由がある」
ジョージ・オーウェル「ナショナリズムについて」



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