14か条の「停戦覚書」(MOU)に署名後、ジュネーブで第一回会談を行ったアメリカとイラン。会談後の発表は、ま、予想通り、アメリカとイランで言ってることがまったく違う。ホントのとこどうなのよ、というのはわからない状態だが、ホルムズ海峡と言うチョークポイントをガッツリ掴んでいるイランに超・有利な条件で話が進んでいることは間違いなく、アメリカ国内では20兆円も費やしたこの戦争、一体何だったの!?と非難ゴーゴーである。
イランの「好感度上昇」という奇妙なことに
アメリカ国内では政権のあまりの失態と素人ぶりに国民は呆れ、その場しのぎの言い逃れやウソばかりを口にする彼らへの信頼は地に落ちた。米国内の雰囲気として、政権よりイランの報道の方を信じてしまう、という妙なことになっている。アメリカ人のイランに対する認識が Horrible Country (最悪の国)から Smart Country (狡猾な国)に変化したというのがこの戦争の副産物である。
上出来のレゴのプロバガンダ動画がバカウケしたり、イランのサッカーチームがイケメンだらけだとか、アメリカにいじめられて可哀想だとか、ワケワカラン理由でイランの「好感度」も微妙に上昇中。だけどちょっと待って。
イランはね、IRGCイラン革命軍という「組」が全国を仕切ってるヤクザ国家。民主主義の国で育った私らには到底想像のつかないコワイ仕組みになっているのだから。
イラン・極道国家の複雑な3層構造
イランは、①聖職者である最高指導者(アヤトラ)と「評議会」、②イラン政府、③IRGC(イラン革命軍)という3層構造になっている。これが極道小説なんかでよくあるヤクザ組織の構造にそっくり。
①アヤトラ 渋く光る大島紬の着物でお茶をたしなみつつコワイ命令を出す極道の大親分。自分は指一つ動かすことなく政治家も警察も動かすフィクサー、これがアヤトラ。
②イラン政府 ジュネーブにアメリカと交渉にやってきた「イラン政府」要人の顔ぶれを見ると、彼らは揃って高学歴で英語も堪能。見るからにアタマの良さそうなソフトな外交官風のイラン政府の人たちは、ヤクザ組織の表に立って交渉やビジネス運営に当たる東大卒インテリだ。
③IRGC ヤクザの「チンピラ」にあたるのがIRGC、と言いたいところだが、チンピラにあたるのはIRGC内の民兵組織「バシジ」。国内の経済基盤と軍事組織力を掌握する巨大組織であるから、一部の幹部エリート層は海外に居を構えて贅沢三昧。「アガザデ」と呼ばれる「ヤクザの若旦那」「極道の令息・令嬢」たちは派手な暮らしぶりをインスタ自慢して顰蹙をかっているらしい…とにかく、IRGCは宗教の名のもとに暴政を敷く悪い人たちである。今年1月に2万人以上の反政府デモ参加者を次々に処刑したのも彼ら(イラン政府は見て見ぬふりを通した)。
国内の経済と軍事をガッチリ握っているIRGCは、表向き「神様と直結しているアヤトラのお告げに従って行動する」ことになっているが、今年ハメネイ師が暗殺されてからはその指揮統制が崩れてホルムズ海峡でも勝手な行動が目立つ。暗殺されたハメネイ師の息子がアヤトラに就任したがどうも彼はIRGCの言いなりらしい…。テロ集団が国家を運営していると言って良い。
「イラン政府」に入るためにはアヤトラの「評議会」の厳しい選抜を受けなければ立候補も出来ないので、反政府やIRGCの意にかなわない人物は最初からアウト。イラン政府、アプローチが違うだけでイデオロギーは同じだ。
この3者が奇妙なバランスをとりながら国を運営しているのがイラン。
3者に共通する目的は
3者に共通するイランの存在目的、究極の目標は「スンニ派ムスリムのサウジアラビアから主導的立場を奪い、中東の石油を後ろ盾に、シーア派イランを中心とした壮大なイスラム世界を構築すること」である。んで、中東の覇権を握ってからは石油でがんがん入ってくるお金を元に一握りの人たちが今後も権益を独り占めすること。何が何でもこの目標を達成すべく、イランは軍事と核に異様なまでにこだわるのだ。
日本をはじめ民主主義の国家の存在目標は「みんながシアワセで豊かな国にするため経済活動にいそしみ、公平な社会制度を構築・維持する」ことであるから、根本からして違う。
イランは、国民が幸せかどうかなんてどうでもいいどころか、上層部のひと握りが利権を握り続けるためには、貧乏で、無知で、宗教でがんじがらめにされたおとなしい国民というのが理想である。人々が国交やインターネットで啓蒙されるのは困る。西側排斥のプロバガンダに余念がないのはそのためだ。
イランでは、それぞれの組織のトップに立つのはわずか12から15人くらいの超エリートたちという。人口90万人の国を、実に50人にたらない数の実力者たちが暴力で押さえつけている。これを極道と言わずしてなんという?
中東パワーマップの書き換え
オバマ政権時に西側諸国が協力し、ロシア、中国までも加わって、イランを牽制する強固な枠組みを確立させたのに、今回のイラン戦争、彼らにとっては「ウソ???」というくらいラッキーな筋書きで物事が進み、凍結資産どころか世界における評判までなんとなく回復するに至ってしまった。
暫定合意の結果、これまで世界中から経済制裁で牽制されていたイランに今後はウハウハのお金が入り続けることになった。お金が入って来た途端にイランはますます軍事強化に勤しむだろうことがアホでも予想できる。
イランの長年の野望は、サウジ西部に位置する「メッカ」の共同管理権を手に入れること。っていうかホントは乗っ取りたいんだろうけどさすがにムリだろうからね。ジリジリと時間をかけて狡猾に駒を進める極道国家、いずれ実現するかもしれない。日本人のワタシらには「聖地」が人の命より重みがあるっていう状況がよくわからんけどね。エルサレムとかね。
まとめ
中東諸国はアメリカの安全保障が案外当てにならないんじゃん???ということがわかってしまったので、今後は自力でイランと向き合っていくしかなくなり、今まで虫のように嫌っていたイランを招待して中東サミットで話し合いを持つことになった。アメリカのお陰でこんな会議のテーブルにつけるようになってしまったヤクザ国家…。
中東諸国が軍事強化のパートナーに選んだのがウクライナ。最新ドローン兵器の長期契約を結んだのが2か月前のことである。アメリカの政権はウクライナのことめちゃくちゃバカにしていたけど戦局は大きく変わり、ロシアに勝ってしまいそうな勢いだ。
ま、アメリカ、とんでもない Can of Worms (ミミズの缶詰)をあけてしまった。にょろにょろ這い出したミミズはもう缶には戻ってくれない。ヤクザに市民権を与えちゃったアメリカ。責任取ってもらいたいもんだ。
添付資料
①インテリヤクザの経歴
ジュネーブに交渉にやってきた東大卒インテリヤクザ「イラン政府」の三人の経歴は、
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ペゼシュキアン大統領(医学博士・心臓外科医)・もと保健医療教育相
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アラグチ外務大臣(イギリス・ケント大学で政治学の博士号)・もと駐日イラン大使
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ガリバフ国会議長(政治地理学博士)もとIRGCの空軍司令官・テヘラン市長
対するアメリカの三人はと言うと、一応イェール大学は出ているが外交経験ゼロのヴァンス大統領、娘婿ジャレッド・クシュナー、不動産オヤジでトランプのダチ、ウィトコフ。赤子の手をひねる….って感じだったのかもしれん。
②アメリカが渡した今後のイランの収入源
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60日間の安全航行期間の終了後には、イランとオマーンが課金し始めるであろうホルムズ海峡航行のための「保険料」や「手数料」で恒常的な収入が見込まれる。
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イランには経済制裁の一環として凍結されていた資産2兆円が返還される(すでにされた?)
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イランにはアメリカと周辺諸国(の民間企業?)から48兆円の復興援助資金を受ける(核保有の条件を満たさないと払わないらしいが)
アメリカ側は「受け取った凍結資産でイランはアメリカの農作物や医薬品を買う「約束」なのでアメリカの産業も潤う」と言っておるが、あの、それ、あまりにアホな説明ではあるまいか…。すっごい負け惜しみである。イランはさっそく「そんな約束してないし、アメリカのGMO(遺伝子組換え)だらけの危ない小麦なんか必要ない」だってさ!



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