深刻な電力不足に直面するアメリカ
今週、この地方を襲った嵐のせいで、私が住む北ニュージャージーでは広域で停電に襲われた。丸4日の停電のあと無事通常の生活に戻ったが、アメリカが今直面している深刻な電力不足について深く考える機会になった。今回の停電は嵐のせいだったが、データセンターの乱立やインフラの老朽化などで全国的に電力が足りず、そのせいで電気代はうなぎ登りだ。猛暑時のエアコン使用ピーク時には、東海岸一帯に電気を供給するPGMという会社が「緊急運転」に切り替えた。イラン戦争は再開し、アメリカの備蓄燃料が1984年以来の低レベルに達した…などエネルギーに関する不安なニュースが日々飛び込んでくる。
停電時の生活について書いたブログはこちら。

化石燃料に固執するアメリカ
電力がまったく足りていないのなら、普通に考えればコストが低く、環境に優しく、設置も早い「再生可能エネルギー(太陽光や風力、クリーンエネルギー)」のプロジェクトを国を挙げて大推進するべき局面のはず。それが、現政権が発足した昨年から、アメリカが力を入れていた再エネの大型プロジェクトはことごとく取りやめになっている。場合によっては、着工後にわざわざ違約金を払ってまで閉鎖した件案もある。環境規制を次々に緩和し、自然保護区でもお構いなく採掘権リースを拡大し続けている。
最近では、ミネソタのスペリオル国立森林公園内の環境保護・採掘禁止措置が覆されて、南米チリの巨大財閥が採掘権を取得したというニュースがあった。これは環境懸念が高まるだけでなく、観光地のレストラン、土産物屋、宿泊所などスモールビジネルに携わる人々にも大きな打撃を与える決定だ。
産業レベルだけではなく、停電していた時に真剣に検討した屋根に設置する「ソーラーパネル」、家庭用太陽光発電についても、かつては政府が出していたソーラーパネル補助金は昨年廃止になっていた。500万円から700万円かかる費用は全額消費者負担である。州によっては、設置するための手数料を取られるという「負」の負担を課しているところまであり、国を上げてとにかくクリーンエネルギーというものを何が何でも阻もうとしているとしか思えないという、奇妙なことになっている。
昨日は、政権が「自転車専用レーン」を作るための補助金を一切取りやめると発表した。自転車なんか乗られたら、ガソリンが売れないから?
世界中で化石燃料離れが進んでいるというのに、アメリカだけがなぜここまで頑固に石油、石炭、天然ガスに固執するのか?
太陽光は「弱々しい」。 歪んだマスキュリニティの拒絶反応
Drill, Baby, Drill ドリル、ベイビー、ドリル(石油や天然ガスを掘って掘って堀りまくるんだ、ベイビー)というのが㋣の大統領選挙の最大公約だった。
圧倒的にト〇〇◯支持者が多いアメリカの伝統的なラストベルト(錆び地帯、かつて重化学工業や製造業で大いに栄えたがその後衰退した地帯)や農村地帯では、工場や炭鉱の閉鎖や難しい農場経営が、多くの白人男性たちから「収入」だけでなく、「家族を養う誇り高い男」というプライドとアイデンティティを奪ってしまった。デスクワークやサービス業、IT中心の現代社会(エリート社会)では自分たちの誇りだった「男らしい肉体労働」の価値が貶められているという強い不満と置き去り感、グローバル化とIT化のせいで工場が閉鎖になった、移民が私らの仕事を奪った、という被害者意識や怒りに火をつけて当選を果たした現政権。
「クリーンエネルギーなど、自分たちをさらに貶めるためのリベラル派の陰謀だ」と政権に言われ続け、○○○プ保守派支持層は地面を掘って資源を力で確保する石油や石炭の現場こそが「本物のタフな男の仕事」であり、風車をまわしたり屋根にパネルを乗せたりするなんてひ弱なやつのやることだ、と信じ込まされている。
社会が軟弱になりすぎている!と思い込む
LGBTQ運動や性差別意識、ポリティカルコレクトネスの高まりで、「男らしく」振る舞うだけで非難される!という不満も保守派支持層に一般的に見られる。ニューヨーク選出の下院議員が「牛舎から排出される二酸化炭素量」について言及しただけで「リベラル派は俺達に牛肉を食べるなというのか!」と反発が起きる。大きなトラックの排気量に気をつけろと言われて反発する。彼らにとってはこの社会が日々、窮屈で生きづらいところになっている。
そこに登場したのがボス猿の㋣である。環境や、人の思惑や、コレクトネス、時に法律などまったく気にかけず好きなように振る舞う(迷惑な)男らしさ満載の男、㋣。
ポリティカル・コレクトネスや環境保護なんて軟弱なリベラルがほざく戯言だ、石油採掘の廃棄が異常気象につながるなどホークス(作り話)にすぎない、と主張する。時代に逆行する政策に青ざめるリベラルエリートたちを見て胸がスッキリする。俺達が社会の進歩に乗り遅れたとバカにするなら、その進化の方を何が何でも止めてやる、とばかりに、無茶な時代錯誤的政策を大歓迎する。
トラッドワイフと性加害
アメリカ右派の間では、SNSを中心に「トラッドワイフ(伝統的家庭主婦)」という、夫に従順で家事育児に専念する女性像が爆発的なブームとなっている。ここのブログでも取り上げたユタ州の「バレリーナ農場」がその代表である。

単なる古風好みの風潮なのではなく、「フェミニズムやジェンダー平等による女性の社会進出は男の沽券に関わる」という不満と恐怖と見て良いと思う。「大黒柱の強い家長と、子どもを生み、育て、家族の世話に専念する妻」がすなわち彼らが描く古き良きアメリカの家族観である。
彼らは、㋣や他の政治家の性加害に対して、驚くほど寛容である。「男は強者であり、女性や弱者を支配して当然」という歪んだマスキュリニティをから、政治家は倫理的であるよりも、自分たちの代わりにリベラルなエリートたちを叩きのめしてくれる「凶暴でタフなボス」であることが大事。性犯罪や女性蔑視に直接つながっている。「支配」と「男らしさ」を履き間違えるこの支持層の特徴である。
サイエンスやロジックではなく「サイコセクシャル(心理性的)」な問題
クリーンエネルギーへの嫌悪感と乖離は、科学や合理性の話ではない。その根底にあるのは、マスキュリニティ(男らしさ)崩壊への危機感という「サイコセクシャル(心理性的)」な理由である。科学的リサーチも、経済的合理性も、地球温暖化のデータも、このサイコセクシャルな「男のプライド」の前には一切の無力。
最新の技術を持ちながら一部の層の「見捨てられるくらいなら社会自体を逆戻りさせてやる」「支配者であり続けたい」という剥き出しの原始的な欲求によって、アメリカの未来が文字通り食いつぶされていく。
世界がものすごい速さでクリーンエネルギーへとシフトし、21世紀の最先端技術であるバッテリー技術や再生可能エネルギーの巨大なグローバル市場は、すべて中国やヨーロッパに明け渡された。アメリカだけが「男らしさの幻想」しがみつき、みずからエネルギー後進国への道を突き進んでいる。信じられん。ディストピアだ。ほんとにメーワクなんですけど?
時代逆光がトレンドのアメリカで、奇しくも今週から「大草原の小さな家」のリメイク版配信がネトフリで始まった。お父さんがいなくては生きていけない家族、「あなたについていくって決めたのよ!」と目をうるうるさせるお母さん。丸太を切り出して自分の腕一本で家を立て、銃で狼から家族を守る。ああああ….それはそれでノスタルジックでいいんですけどね、なんでこのタイミングでこんなリメイク版?
添付資料
ソーラーパネルの設置を検討したが
今回の停電時、これからますます増えていくだろう天災やエネルギー不足に対応するため、ソーラーパネルを屋根に設置するという策を検討したが、このシステム一式のコストが3万5千ドルから4万5千ドル(550万円 – 730万円)とわかり、あきらめざるをえない状況に。
以前は政府からでていた30%の補助金は「政府のムダ遣いを減らす」名目で廃止になっていた。政府が先頭に立って再エネに逆行している今は、そんな補助金を臨むすべもない。
補助金もなく550万円のパネルを設置した場合、費用回収に何十年もかかる。それどころか、家屋をアップグレードしたとして、固定資産税が上がる。
ニュージャージー州では先日プラグイン・パネル(庭にぽんと置くタイプ)の簡易パネルが合法化されたので(これまでなんで違法だったんだ?)、これは気休め程度にネットショッピングしてみようかと思っている。
他国のソーラーパネル事情
日本ではどうなんだろう?AIに調べてもらったところ、以下のことがわかった。
東京都内の戸建て(既築)に 一般的な電力料のシステムを導入した場合、費用総額はおよそ230万円。だが、補助金として
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東京都から(太陽光): 約48万円
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東京都から(蓄電池): 約65万円
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国から(DR蓄電池補助): 約22万円
合計135万円の補助が出るので、自己負担額は約95万円と出た。
すでに3軒に一軒の一般家庭にパネルが普及しているオーストラリアでは、政府が約30%を負担してくれて、最終的な個人負担は約130万円。
インドに至っては、政府の特別プロジェクトで約60%を国が負担してくれるので、個人負担は15万から18万円で済むという。
再エネに最も意識が高いヨーロッパでは、新築に太陽光が義務化されて、費用は200万円程度と日本より高いが、税控除と低金利ローンが受けられる。プラグイン・パネルは急激に普及していて、その費用は約15万円とのことだ。
特筆すべきは中国。政府から自治体にかせられた太陽光発電ノルマにより、自治体と企業が協力して「あなたの屋根を貸してくれたらパネルをただで設置し、毎月屋根の賃貸料を支払います」という条件(つまり自己負担金がないどころか収入になる)を出したため、特に農村部で爆発的に普及。逆に発電量が多すぎて受け入れの送電網が間に合わないという事態が多発したため今年に入って補助金の取りやめなど政策の見直しが行われている。


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