アメリカで「抹茶」が爆発的人気なのはご存知だろうか。
アメリカの「コンブチャ」は実は昆布茶ではなく「紅茶キノコ」であるように、アメリカで独り歩きをはじめた抹茶は、日本オリジナル抹茶とは遠く乖離した「MATCHA ”マッチャー”」(「マ」にアクセントね)」へという独立カテゴリーへ変貌を遂げた。
日本から進出の nana’s green tea
いつも楽しんで読ませていただいているスイーツレビューの名サイト「いもくりかぼちゃ」さんのブログ。ある日、大好きな栗がフィーチャーされている抹茶パフェが紹介されていた。

お店を見ると「nana’s green tea」と書いてある。あれ?この店、ニューヨークで見かけたことがある。最近あらゆるところに乱立する抹茶カフェの一つだと思い気にもとめなかったこの店が、実は日本から進出したちゃんとした抹茶やさんだったとは。残念ながらニューヨークまで出かけた日は時間があわず、写真は撮ってきたけど飲食はできなかった。

お店の前にはこんな看板が。

ウェブサイトをチェックすると、栗などの季節限定品はないけど定番のメニューは日本とおんなじ。こちらのリンクがニューヨーク店のメニューです。
わざわざ進出を決めたということは、アメリカの抹茶はただのブームでは終わらない需要の高さを見せているということだな。
SOHOの抹茶専門店 「Matchaful マッチャフル」
nana’sの代わりに訪れたのは、ニューヨークでも指折りのおシャレ地区ソーホーにある Matchaful マッチャフル。「ワンダフル」と言う言葉にも入っている「フル」は、〇〇でいっぱい、という示唆があって、なんだか福々しいというか、入店する前から「抹茶でいっぱいなのよ!」という明るさを感じさせる店名だ。小さいけれども清潔で明るい店内で、3人の若い女の子が楽しくおしゃべりしながら次々にはいる注文を捌いていた。
抹茶専門店なんだがら抹茶飲めよ、と自分にツッコミ入れながら注文したのは抹茶ソフトクリーム(英語ではソフトクリームのことを 「柔らかいのを供する」という意味で Soft Serve ソフトサーブという)。この店にソフトクリームは抹茶味と「Earth Glow(アース・グロウ)」の2種あって、アース・グロウはちょっと見たことのないきれいな深い青をしている。2つとも食べられるツイストを注文してみた。

ふむむむ….おいしい!一体この青い方は、何が入っているのか?コクはあるけどさっぱりで、Earth (地球、土)というくらいだから、なんというかもっと泥臭い味、例えばごぼうとか、そういう風味を期待していたら全然違った。調べましたよ。
- ベース: カシュー、オーツを挽いたもの、自家製オーツミルク
- 油分、つなぎ成分: エクストラバージン・オリーブオイル(!)アロールート、サンフラワーレシチン
- 甘味料: ココナツシュガー
- 味と色つけ: タロ、マダガスカルバニラ、スピルリナ、バタフライピーフラワー、ヒマラヤンソルト
オリーブオイルでこんな風味が出るなんて。抹茶味の方も同じくヴィーガンで油分はオリーブオイルと書いてあった。
アメリカのソフトクリームは普通、とっても甘くて大きくて完食できた試しがないが、これはするりとお腹に入ってくれて、還暦あるあるの「食後の胃もたれ」もなかった。
後でわかったが、きれいな青と緑の組み合わせが「地球」のようだとして抹茶専門店ではよく使われる色使いなのだそうだ。抹茶といちご、抹茶とマンゴー、というグラデーションも人気。
静岡から直送のMatchafulの抹茶
アイスをなめなめしながら壁のメニューをじっくりチェックする。いちばん最初に目に入ったのがこれ。

”FARM-TO-WHISK(お茶農園から茶筅へ直送)。本店の抹茶はすべて日本で4代続く農薬不使用のお茶農園から直接仕入れたものです。「きわみ」と「つゆひかり」は新しくUSDAオーガニックに認定されました。”と書いてある。調べると、静岡の「服部農園」さんのお抹茶のよう。
こちらがメニューの「アイスドリンク」の部分。ウェブでも見れます。

完全におシャレ系のヴィーガン健康志向の店である。
定番の抹茶オレや抹茶ラテの他に、先程のアース・グロウを組み合わせたもの、GABAが入った「禅バニラ」、そして「Oishii Berry(オイシイベリー)」というストロベリー抹茶ドリンクもある。この「Oishii」は昨年くらいから米国で売られ始めた最高級いちごで、一個1ドルくらいするけど甘くておいしい。
皆さん色々とご意見を持つアメリカ人向け、と感心するのがこの「カスタマイゼーション」の欄。オーツ、アーモンド、ソイとミルクも選べるし、甘味はココナツシュガー、アガベ、メープルシロップ、モンクフルーツの中から指定することができる。
そして追加料金を払って、Enhancement(エンハンスメント)を選ぶことができる。エンハンスメントは「進化」とか「改良」の意味。通常の抹茶に自分の好みの「プラスアルファ」を入れて「進化」させてもらうことができるのだ。
こちらがエンハンスメントの詳細
「エンハンスメント」品目のバラエティはこちら、写真中の横長の箱の部分です。

どんなものを入れてもらえるのかと言うと、左上から
- スピルリナ
- バタフライピーフラワー
- シナモン
- GABAティ
- ラベンターエクストラクト
- マダガスカル・バニラ
- マクイベリー
- マッチャブースト(増量)
- 味噌ピーナツバターのトッピングフォーム
- マンゴー・ココナツミルクのトッピングフォーム
- マッチャブースト(2倍増量)
- ピープロテイン
- ペパーミント
- パンプキンシードプロテイン
- 霊芝マッシュルーム
- サチャインチ(インカナッツ)
- タロ
- トコス
- バニラアーモンドトッピングフォーム
すごいな…。ありとあらゆる「スーパーフード」と最近話題の「アダプトゲン」を網羅だ。
「アダプトゲン」は、ストレスに対する抵抗力や適応力を高める作用があるとして最近むくむく注目されている食品群。代表的なものは霊芝や山伏茸などのきのこ類、GABAやハーブのラベンダーなど。日本なら普通に「漢方」や「自然ハーブ」として取り入れられているキノコや生薬だ。
おしゃれな飲み物として地位を確立
抹茶は、元をたどるとその抗酸化作用とコーヒーよりも質の良いカフェインが注目されて「スーパーフード」の一つとしてアメリカで人気を高めてきた。
以前はスタバのカップを持って街を闊歩するのがお洒落のしるしだったが、今では緑色の飲み物を手にして歩くのが「ライフスタイル・ステータス」。コーヒーを辞めて抹茶にすることが、クリーンなライフスタイルを選ぶクールで健康意識が高い「イケてる人」と認識される。
体にいいとされる抹茶にさらにピープロテイン、マクイベリー(アサイより強烈)、インカナッツなどのスーパーフードを追加した最強の抹茶ドリンクは、爆はやりの後今では生活にすっかり定着した「スムージー」のような健康食品の一面も見せるようになった。
想像してください、ソーホー付近に住んでいる人が、お気に入りの「アダプトゲン」をがんがん入れたマッチャドリンクをオンラインオーダーし、朝のワークアウト帰りにピックアップ。ストローで飲みながら帰宅。「今日のプロテインはこのドリンクで50グラム摂取できたわ!バタフライピーのおかげで気持ちもとっても落ち着いているわ…。」とつぶやく、なーんて情景が目に浮かぶ。
食物は進化する
最近は「マッシュルーム抹茶」といって霊芝や山伏茸の粉を混ぜこんだ抹茶も売られている。コラーゲン抹茶、クレアチン抹茶というのもあり、じっくりと茶筅で立てたお茶を季節の和菓子とお軸を楽しみながらいただく、という本来のお茶の姿からはちょっと考えられないようなコトになっている。
日本で育ったら、スーパーフードなのかアダプトゲンなのかの分類は別としてとにかく「体に良いもの、効用があるものの知識」が普通に身についている。風邪に聞く葛根湯。おなじみのウコン(ターメリック)、青汁、霊芝、ドクダミに、なつめ、クコの実、ゆず、しょうが。ハトムギ、陳皮に桂皮、と馴染みの食材やハーブ。西洋医学一本槍で育った一般のアメリカ人にはその知識はない。抹茶はかっこいいからと言う理由でのに始めたとしても、そこから知識が広がって健康への意識が高まっていくなら言うことはない。
次回のブログでは、アメリカの抹茶業界を市場規模や店舗展開などのビジネス視点から分析してみたいと思います。


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