アメリカで大流行「ソマティック・エクササイズ」

おもしろ英語・おもしろUSA

Jane Fonda’s Low Impact Workout, 1986.Everett Collection / Courtesy of Warner Bros

犬の散歩中に降り出した雪がうっすらつもり始めた。地面が白く雪で覆われると、普段はどんよりとしている東海岸の冬の景色が1トーン明るくなる。音も雪が吸収してくれるのか、しーんと静か。ただいま部屋の換気中で寒いっちゃ寒いが、雪を眺めては、あの暖かい四国から自分をここにわざわざ移植して根を張らせたことをしきりに不思議に思う。おもしろい人生だとポジティブ解釈もできるんだがね、生まれた土地から離れれば離れるほどストレスホルモンのコルチゾルが普通より多めに出て、体内に滞留する…という説もある。

なんか、そういう気がする…。やはり外国、慣れてしまって意識の表面には達しないが実は体が受け止めているであろうちっこいストレスが考えただけでたくさんある。まずはテーブルと椅子の高さ(笑)アメリカは日本より高い。オランダや北欧に行くともっと高いらしいが。食べたい食べ物(日本食)が手軽に食べられない。図書館の本が英語。公共交通機関がない、または不便。

コルチゾルが過剰になると、よく眠れなかったり、いつも疲れている、体重が落ちない、風邪を引きやすくなる、などストレス症状のサインが体に出る。体重が落ちないのは他に原因がある(お菓子ね)が、睡眠の質は良くないし、そのせいでなーんかスッキリしない。やっぱコルチゾル過剰だ!

アメリカの暮らし、外国人じゃなくてもストレス貯まることがいっぱいだ。政情悪い、銃犯罪多い、健康保険はあってないようなもの、仕事はいつクビになるかわからん、離婚多い、インフレ…よくお店の人に怒鳴っていちゃもんつけている人を見かけるしさ、社会のテンションがめっちゃ高い。子供時代のトラウマでガガーンと出たコルチゾルも処理されないまま体に滞っていたりするらしいし。

なんとかしたい!とここ数年一気にスターダムにのし上がったエクササイズ法が Somatic Exercise ソマティック・エクササイズだ。「コルチゾル軽減に絶大の効果」があると言われている。

Soma ソマ はギリシャ語で「からだ」を意味する。筋肉力や身体能力を上げるための筋トレとは違って、これは「筋肉の緊張をほぐす」ことが一義の体操。ゆっくりとムリのない動きを繰り返すうちに自分のどこに緊張が溜まっているのか、自分の動きになにかクセがあるのかががわかってくる。「心地よさ」「リラックス感」に重点を置いて単純な動きを通して自分の体を探るという体操だ。

ヨガというと「体が固いからムリ」という声をよく聞くが、ソマティックのポーズはヨガとほとんど同じでありながら、可動域の広い狭いにかかわらず左右にゆらゆらと体を揺らしたり優しくねじったり、という年齢も体の硬さも関係なく誰でも「自分が気持ちいい」ということに重点を置いた動きを楽しめる。筋肉増強ではなくリラックスが目的だからね。老人ホームで行われるシニア向けのヨガのクラスや、椅子に座ったまま行うチェアヨガなどが多分ソマティックととても似ているのではないかと思う。

ヨガやピラティスの敷居が高くてウォーキング以外のエクササイズはあんまりしてないのよ、という人たちには特におすすめ。ムリをせずに今まで使っていなかった筋肉をほぐすことができ、動かしていているうちに自然と筋力もついてくる。そして必ず呼吸をしながら行うので、日中に深呼吸や瞑想の時間を取ることができない人にもおすすめだ。そして「ソマティックやってるんだからストレスたまんないもんね〜」という自己暗示効果も期待できる(と思う)。

ジムやヨガの教室にはソマティックのクラスがあり、ソマティックヨガという混合クラスも最近は多い。近所のヨガ教室には新しく「トラウマコース」、ソマティックを使って過去のトラウマに対処するというテーマのクラスが増設された。これには離婚以来10年間人生がつまんねえ、というトラウマを抱える友人が早速参加してきたんだが「スタジオの天井が低くてストレスが溜まった」というなんかよくわからん感想だった。動き的には「ごくフツー」のソマティックだったそうだ。

chatGPTによると「日本でもソマティックエクササイズは徐々に注目を集めつつありますが、アメリカやヨーロッパほど主流ではありません」。理学療法や高齢ケア、ダンサーや俳優など体を酷使する人の回復法としては一部で注目されているようだが、まだまだ一般的ではないみたい?

YouTubeで「ソマティック」で探してみたが理学療法士さんや心理士さんの真面目な解説動画が多くて今夜から実行できる!という動画は見つからなかったよ。探し方が悪いのかもしれんが?

英語でも字幕をいれるか動画を見て真似をすればいいだけなので、ふたつここでご紹介しておくね。

Loren Ikeda ローレン・イケダさんというから日系人だね、ヨガの先生だが動画にソマティックのプレイリストがある。一つ10分から20分の動画で、とっつきやすい。

こちらは The Workout Witch ワークアウト魔女という名でTikTokで人気のソマティックインフルエンサー、もとピラティス講師のリズさん。育ちも複雑、数年前にはなんと夫に全財産を持ち逃げされて破産したというトラウマの持ち主がこのソマティックで生き延びたと言うから説得力あるじゃないか!下の動画は21分間の全身リラクゼーションエクササイズだが、数々のショート動画で「状況別」の短い体の動きをいくつも紹介してくれている。「ストレスが襲ってきたとき」「疲れてしょうがないとき」「やる気が全く出ないとき」など、1分以内でささっと体を動かしてぱぱっと気分転換ができる。

ストレスいっぱいのアメリカで誰でも知ってる一般用語となった「コルチゾル」や「ソマティック」。これにもう一つ加え最近市民権を得つつある言葉が Vagus Nerve ヴァガス・ナーブ 迷走神経。日本では「副交感神経」の役割と大切さが認識されて久しくアメリカ人にそのコンセプトを説明するのに難儀したが、やっと理解が深まった感じ。わたしたちが「副交感神経の仕事」として注目している消化や呼吸、心拍数などの臓器活動や。感覚、運動、感情を掌るはたらきをしているのが迷走神経だから。この「ヴァガス・ナーブを整える効果がある」ことでもソマティックエクササイズが注目されている。

心と体はつながっていることを体感的に知っていた私ら日本人。このソマティック、早く逆輸入されて日本でもどんどん広まると良いね!ヨガやピラティスの先生たちにどうか頑張ってほしい。

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