パリの暴動についてアメリカから分析します

世界情勢・政治

日本でも大きく報道されているパリの暴動。ヨーロッパの各地で、規模の大小はあれど似たような暴動が起き続けているというから不安が募る。

パリで起きたデモとそれに続く暴動

パリの暴動は、教育の質に不満を持つ学生たちが始めたデモに、賃金沈滞や物価高騰に苦しむ労働者階級が加わってエスカレートしたが、10月17日に始まった暴動は、それらのデモに便乗した一部の人たちが破壊と窃盗を繰り返すまったくの犯罪行為と解釈されている。

その「一部の人」たち。報道を見ると、マスクの下の肌が茶色いアフリカ系、アラブ系がほとんど。ただでさえ風当たりの強い移民たちがこんな問題を起こすと、反移民の層に大きな言い訳を与えてしまうのに、と見ていてハラハラした。

暴動民がみんなお揃いの服を着てる件

フランスに住んでいないワタシには本当の理由がわかる由もないが、実はこの暴動、見ていて何か「きな臭い」と感じた。生活が苦しい住民層がこの機会に窃盗をしようじゃないか、と自然発生的に起こった暴動とはちょっと違う、何かとても組織的なもの..?誰かが扇動して、またはインセンティブを与えて暴動民を街に送り出しているような、そんな感じがしたのである。暴動民はみな決まって全身黒に黒のマスク。自然発生的な暴動ならば政治的なメッセージを含む(例えばパレスチナの旗とか)服装が目につくはず?少し時間をずらせて始まったミラノの暴動も黒尽くめの同じ服装だったし。

暴動の本当の原因は?うごめく陰謀論

そう思ったのはワタシだけではなかったようで、数日たった今、陰謀論的なものから真実味のあるものまで暴動の原因についての様々な推測や論理が展開されている。それらをおおまかに仕訳してみると下の5つの説が有力。そのどれが本当なのかが証明される日は多分こないと思うけれど、それらの意見をご紹介したい。

  1. マクロン失脚を目論むフランス右派政権(極右勢力)の企て
  2. ロシアの関与(ハイブリッド戦争・情報戦)
  3. 国をどこと特定できない影の存在(アメリカ/ディープステート・グローバリスト)
  4. フランス政府自体の自作自演
  5. 全ては移民が悪いという説
1.マクロン失脚を目論むフランス右派政権(極右勢力)の企て

「今の政権が機能不全に陥っている」「治安を維持できていない」ことをアピールしてマクロン大統領を失脚させるために、右派・極右政治勢力(ルペンの「国民連合」など)が裏で扇動している、という説。暴動と同時に、右派系のインフルエンサーやメディアが暴動の怖い画像をリアルタイムで誇張拡散して不安や怒りを煽って「強力なリーダーシップ(極右政権)への交替が必要」と繰り返したことがこの論の大きな裏付けになっている。

2.ロシアの関与(ハイブリッド戦争・情報戦)

フランスや他のEU諸国の国内の分断を煽って政治基盤を揺るがせ、ウクライナ支援などの外向的与力を消耗させるために、ロシアが激しい情報戦(ボット発信など)を行って暴動を扇動したという説。分断を煽り、マクロン政権を揺さぶるためにロシア(情報機関やボット・トロール部隊)が介入しているという説。実際にロシア関連のボットアカウントや偽ニュースサイトが、暴動の映像を誇張して拡散して政権のスキャンダルを捏造したことが専門機関の調査で明らかになった。

3.国をどこと特定できない影の存在(アメリカ/ディープステート・グローバリスト)

これが各説の中でいちばん陰謀論寄り。「特定の国(またはアメリカの陰の勢力、ディープステート、国際金融資本)が、国家の主権を弱めて欧州の秩序を再編するためにフランスを裏から操作している」という説である。

一昔まえにこれを聞いたら「イスラエルが世界の気候を操っている」という陰謀論と同種のカテゴリーに放り込んだと思うが、エプ◯タイン・ファイルの内容が明らかになってくるにつれ、国を超えた悪い人たちの影の強力なネットワークというものは実際に存在するんかい(怖)ということがわかってきた今となっては、完全に無視はできない説かもしれない…?複雑な世の中を、巨大な悪者のせいにして理解したいという心理的な側面もある。

4.フランス政府自体の自作自演

ふむ、これも政府への不信感が生んだ陰謀論と思うがどうだろうか?マクロン政府がわざと暴動を過激化・放置して、戒厳令や緊急事態宣言を出して(政府の決定権が大きくなる)厳しい治安維持法案を通すための口実にしているという説である。裏付けとしてあげられているのが、

暴動のきっかけになった学生のデモに国(警察)が真っ向から反対し暴力的な対応をしたことや、ルーブル美術館など国にマジで深刻な影響を与える歴史的、文化的象徴や、国の観光や産業を支える基幹産業、目抜き通りのハイファッションの店舗(ルイ・ヴィトンやシャネル)などはうまいこと暴動の被害から逃れたのに、移民の多い地域には警察の出動が殆ど見られず被害が広がったこと、などである。ま、裏付けとしてはめっちゃ弱いがこういう説がまことしやかに囁かれるということは、実際、政府の求心力がかなり低下している、ということだな。

5.全ては移民が悪いという説

郊外のバンリューという地域に住む移民ルーツの若者が、貧困・失業・警察からの差別的な扱いに対して暴力を含むデモを始めたことは証明されている。フェイクニュースではないであろう大手メディアの報道からも、某道民の大多数が非白人であることは明らかで、それが根強い「移民問題」や「イスラム教徒の増加への不満」から「全ては移民が悪い」説に帰結。

ただ、被害がいちばん広がったのは当の移民たちが多い地区(土地勘がまったくないが、ベルヴィル通り、シャトー・ルージュ地区のドゥジャン通り等らしい)だったのが説明がつかないが、高級店に比べてセキュリティが行き届いてないので押し入りやすかったことがその理由とされた。

まとめ

どの説も、信じようと思えば単独でなんとなく納得の行く説ではあるが、結局はそのすべてが複雑に絡み合った階層的な構造なのでは?

教育や生活環境への不満、物価高、行政サービスや現政権への不満で始まったデモや抗議活動を、極右勢力が現政権批判や移民反対論に政治的に利用して、SNSや演説でますますその不満を助長する。

そこにロシアやボットなどが外部からの陰謀論やフェークニュースがますます火に油を注ぐかたちとなり、市民の不満や不安感が高まるにつれて、心理的に「ディープステート」や「政府の自作自演」など極端な考えに傾いてなんとか理由を探そうとする….。

とにかく、ニュースを見ていると、驚愕、恐怖、不安、混乱、落胆、といったネガティブな感覚が大きなひとかたまりになって押し寄せてくる。これを世界中の人達が経験しているのだから、現状不安は指数関数的に膨らんでいく。どうなっちゃうのかナ。

世界的不安連鎖の震源、アメリカは今日もシッチャカメッチャカ。とにかく、ロシアに急接近のアメリカが変わらない限りロシアという爆弾を近所に抱えたヨーロッパが落ち着く日は来ない気がする。

 

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