コロナの自粛時に、アメリカ中に異様なまでにひろまった天然酵母のひとつ「サワードウ」を使ったパン作り。市販の顆粒やペースト状のイーストは使わず、天然の酵母やバクテリアの力を借りてパンをふくらませる製法だ。
最近になって実はイギリスをはじめ他のヨーロッパ諸国でも同じブームが広まっていることを知った。
自粛の初期にいろんな食糧が品薄になってしまったとき、あわてて顆粒イーストを1キロも購入してしまった。サワードウの焼き方が溢れるSNSを横目で見ながら「イースト使わないと古くなっちゃうしー」と普通のイーストのパンを作り続けた。
実はサワードウ独特の酸っぱみがいまいち好きじゃなかったこともあり、自粛中のブームには完全に乗り遅れた。
が!
みなさんに3年遅れて今、サワードウにハマりにハマっている。
このことは以前の投稿にも書いた。
サワードウ・スターターと呼ばれる酵母種は、小麦粉と水だけで作る。混ぜてどろ状にしたものをおいておくと、粉や空気中に含まれるイースト菌とバクテリアの活躍でぷくぷくと小さな気泡をたて始める。約1週間。りんごや干しぶどうから作る人もいる。
赤ちゃんから粉で育てた私の可愛いスターターは、今は安定した20代後半という落ち着きを見せ、かなり雑な扱いをしても「しゃあないなああ」と頑張って、いい感じで発酵してくれるようになった。
入門書に書いてあることに充実に従って、なんとか見栄えのするパンがオーブンから出てくることが増えてきて、次のレベルに挑戦してみたくなってきた….
3日(!)かけてゆっくりと作る素朴な「タルティーンのカントリー・ブレッド」というレシピ。これを通らずしてサワードウ道は極められない、らしい。
サワードウ界の踏み絵?とにかく次のステップはこれに決定。
このパンのレシピと工程は次々回のブログ『実践編』で紹介するね。
サワードウの科学

もう何十年も焼いてきたくせに実際パン種の中で何が起こっているのかを知ったのは最近だ。特にサワードウ。
聞きかじりの知識はあったが、今回ネットフリックスのドキュメンタリー Cooked を見たことがきっかけでそのからくりがますます気になってきた。ドキュメンタリーは下に詳しくご紹介しています☟
わたしはサイエンティストじゃないし、だたの趣味のパンおばさんだ。パンの中で起きている全ての化学反応を把握するのもここで説明するのも無理だけど、私の解釈、ということで参考にしていただけたらと思う。
パン作りは6000年前くらいに多分小麦がゆを放置しておいたら環境の中のイースト菌やバクテリアが働いて、そこから甘い発酵の香りがしたのが起源のよう。

By Ian Alexander
(紀元前2500年のエジプトのテーブルに縦にスライスされたパンが彫られている)
その頃は空中のイースト菌だ、バクテリアだ、ということはもちろんわかっていないまでも「こうやったらこういうことが起きる」という原理で受け継がれてきたものだ。
空中の複数の菌が一緒に働いて、市販のイーストとは違って粉をゆっくりゆっくりと食べて発酵する過程で二酸化炭素の
Belch ベルチ げっぷ
をして、放出されたものが種の中に含まれる空気だ。それをグルテンでできた網で外に逃さず焼くからパンはふわふわになる。
粉の中の炭水化物が糖分となるのでカーブスは太る、という評判を得ているが、サワードウの場合は発酵時間があまりに長く、違った糖分を餌にする複数の菌が同時に働いているので炭水化物の分解がかなり進む。消化に優しくサワードウは食べてもあまり太らないらしい。
私はわからんが夫は本当にその通り、と太鼓判を押している。そう思い込みたいだけと言う説もあるが。
そしてさらに消化が難しいと言われているグルテンの網のタンパク質も、長い発酵の過程で胃が消化のしやすい状態まで変化していることが観察できるという。
これがグルテン不耐の人でもサワードウのパンなら大丈夫、と言われる所以だ。これは次男も私もグルテン不耐気味なので経験から確証済み。だが、グルテン「フリー」ではないのでシリアックの人などはどうだろうか。
ドキュメンタリー 「Cooked」
私が見たネトフリのドキュメンタリー 「Cooked クックド」は、同名の本から著者の Michael Pollan マイケル・ポーランさんというジャーナリストが制作したもの。



本の日本語訳も出ていることを最近知り合いが教えてくれた。サワードウが出てくるのは下巻『空気』の章。


ジャーナリストで、ハーバードとバークレーというピカピカの名門でも教鞭をとっているマイケルさんは食の文化的、社会的影響の研究が専門。
自身も料理が趣味で、彼の食に関する本はほとんどオタクっぽいほどの緻密なリサーチに基づいている。
サワードウの科学がわかりやすく解明してあるこの本、早速読みはじめた。著者のマイケルさんがモダン・サワードウの「ご本山」ともいうべきサンフランシスコの

By Carl Collins from Brooklyn, NY, USA
Tartine タルティーン
という有名サワードウ屋さんのオーナー、Chad Robertson チャド・ロバートソンさんににわか入門し、パンの原理と焼き方を学ぶという章があった。この下の写真の人ね👇
マイケルさんの本にチャドさんが出てきた時には、そのつながりにびっくりした。おーおーこの人知ってる!

Photo: VOGUE https://www.vogue.com/article/rising-star-chad-robertson-of-san-franciscos-tartine-bakery-cafe
そう、私が次に焼くことにした「タルティーンのカントリー・ブレッド」、これはチャドさんのパンの本

Tartine Bread タルティーン・ブレッド

のレシピなのだ。この本はサワードウの経典(?)。「タルティーンのカントリー・ブレッドを制するものはサワードウを制する」と世間では言われており(多分)そろそろ入門編は卒業できるかな、と思った時に購入してあった。
同じドキュメンタリーに出てくるカナダ人の男性、Richard Bourdon リチャード・ボードンさんは、マサチューセッツの田舎で自分で麦を挽き、頑固なサワードウ作りを続けている人。

Tartine のチャドさんが調理師学校にいた時、はじめてサワードウを知ったのは研修で訪れたこのリチャードさんのベーカリーだった。迷うことなくサワードウ職人となることを決めた運命の出会いだったと言う。
そして、
チャドさんの本 Tartine Bread を最初に私に紹介してくれたのは、インスタグラムで知った若干19歳の可愛らしいパン屋さん。
イギリスのオックスフィードで Orange Bakery オレンジ・ベーカリーというこれまた可愛らしいパン屋さんをお父さんと営む Kitty Tait キティ・テイトちゃんだ。
いや、直接紹介してくれたわけじゃなくて、彼女の本を読んで知ったんだけどね。
キティちゃんの本 Breadsong Kindle版はこちら ☟

1本のドキュメンタリーで、私のサワードウ・ワールドの立役者たちが円になってつながった。この可愛いキティちゃんからチャドさんを知り、チャドさんにパン作りを教えてもらったのは、私に強い印象を残したドキュメンタリーを作ったマイケルさん。
そしてキティちゃん(と私)が尊敬する Tartine のチャドさんは、ドキュメンタリーでサワードウを語るリチャードさんに学んだのだ。
英語で「必要な時に先生は現れる」と言うけれど、最近とみにハマっているサワードウ。私の頭からはサワードウ情報をキャッチするためのアンテナがまるでニョキニョキと出ているみたい。
て言うか、もしかしたらサワードウ界はけっこう狭いのか???
さてキティちゃんの本とパン・ジャーニーについては後日のブログで。14歳で不安症を発症して学校に行くことができなくなったキティちゃんが自分でパン屋さんを開くことになるまでを書いた本。
涙するよ!



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