H1-Bビザ、アメリカの学力、AI業界の仕組み

世界情勢・政治

一昨日のブログで、アメリカの高度技術者向け勤労ビザ、H1-Bビザに現在の約100倍、10万ドル(1500万円)の手数料が課せられることになったと書いた。

アメリカの勤労ビザ問題でパニック!
H1-Bと呼ばれるアメリカの専門職ビザの手数料が今までの100倍、1500万円に引き上げられた話を深掘り。このビザを持っている人はもちろん、雇う側もIT業界も、そして他のビザやグリーンカード保持者にとっても大きなショック。発表内容が曖昧でそれも混乱とパニックを引き起こす原因になりました。

このニュースは他の事件の影に隠れてメディアではあまり取り上げられず、移民やビザ関連への関心はやはり低いんだなとがっかりしていたところだったが、目玉のニュースが落ち着いてきた月曜日になってポツポツと取り上げられるようになった…のも数時間で、その後はまた、反体制的な発言をしたとして番組を降板させられたコメディアンの復帰が決まったことや、国連総会での大*領の迷スピーチ、ダラスでおきた移民局襲撃事件、あの人の怒りに触れた元FB*長官が送検されそうになっている…など平和時には考えられないようなニュースがものすごい勢いで追いかけてきて、ビザは一部関心のある人の間でしか話題にされない状況に逆戻りしてしまった。

おばちゃんはでも、色んな角度からずっと考え続けている。

H1-Bビザを取得してアメリカにやってくる優秀な人材たちの恩恵を誰よりもこうむっているのはアメリカの巨大企業やテック業界で、毎年8万5000人に限って発行されるビザのうち半数以上がそれらの会社に就職している。

スタートアップや中小企業に就職するのは約10%らしいが、今回の「手数料10万ドル」で、資金力のない彼らが優秀な外国人技術者を雇うのは現実的に見て難しくなってしまった。巨大企業、特にアマゾンやマイクロソフトは、手数料を払ってでも雇用を続ける意向を示しているそう。

2025年には、8万5000人の枠に約12万件の申し込みがあった。アマゾンは約1万件、マイクロソフトは約5000件のビザ枠申し込みをしたので、その全てに手数料を払ったらアマゾンの負担は100億ドル、約1兆5千万円。イタリアでの豪華結婚式に70億ドル使ったベゾスにしてみたら、そんなん屁。とすると、優秀な人材は巨大企業、特にテックにますます集中、すでに大きい資金や技術の格差が半端なく広がっていくことになる。

2024年に公開された国際成人力調査(PIAAC)の結果によると、アメリカ人の54%が小学校6年生以下の読解力しか身に着けておらず、60%が中学2年生程度の数学力しか持っていなかった(このブログの最後にアメリカ、日本、フィンランドを比較した表を添付するね)。

この統計によると仕事で必要な数学力があるアメリカ人は9%未満とも言われていて、高等教育機関や研究機関を多く抱えるアメリカ、国外から見たらこの統計は奇妙に見えるかもしれないが、とにかく格差が激しい。箱を開けてみたら、研究機関やAIの発展には、アメリカ原産の脳みそに混じる相当数の優秀な外国産脳みその貢献が大きかったということだ。

病院、大学、NGO、研究機関等には8万5000件とは別枠のH1-Bビザが割り当てられるが、テック企業とは違って10万ドルの手数料なんてとんでもない。海外のえり抜き、これらの優秀な頭脳があってこそアメリカは常に医学や各種研究の最先端を走ってこられたのに。国の自殺行為としか言いようがないが、一体どうしたもんかね?

イーロン・マスク、グーグルCEOのスンダ・ピチャイ、マイクロソフトCEOのサティア・ナデラ、この人たちみーんなもとはH1-Bビザで米国に来たんだよ?

ま、とにかく。下の表は、現在多くのH1-B就業者を抱える企業20社をまとめたもの。数は2025年3月のビザ申請件数。2と7はインド資本だがそれ以外は全てアメリカの巨大企業、多分ひとりあたり10万ドルの手数料を問題なく吸収できる資金力がある会社たち。

ちょっと面白いのは右端のコラム。ホワイトハウスで先日行われたテックリーダーお食事会(リンクはこのブログの最後)に参加して何かと政府から良きを計らってもらえる立場に自分を置いた企業が半分以上。

 

Rank 会社名(Company) 申請件数 業界 テックリーダー食事会参加
1 Amazon.com Services LLC (アマゾン) 10,044件 小売・クラウド 参加なし(招待なし)
2 Tata Consultancy Services (タタ・コンサルタンシー・サービシズ) 5,505件 ITコンサルティング 不明
3 Microsoft Corporation (マイクロソフト) 5,189件 ソフトウェア 参加あり
4 Meta Platforms Inc (メタ) 5,123件 ソーシャルメディア・AI 参加あり
5 Apple Inc (アップル) 4,202件 電子機器・ソフト 参加あり
6 Google LLC (グーグル) 4,181件 テクノロジー・AI 参加あり
7 Cognizant Technology Solutions (コグニザント) 2,493件 ITコンサルティング 不明
8 JPMorgan Chase & Co (JPモルガン) 2,440件 金融 不明
9 Walmart Associates Inc (ウォルマート) 2,390件 小売 不明
10 Deloitte Consulting LLP (デロイト) 2,353件 コンサルティング 不明
11 Infosys (インフォシス) 1,806件 ITサービス 不明
12 Intel Corporation (インテル) 1,233件 半導体・技術 不明
13 IBM (アイビーエム) 1,210件 IT・コンサル 不明
14 Accenture (アクセンチュア) 1,123件 コンサルティング 不明
15 Cisco Systems (シスコ) 1,050件 ネットワーク 不明
16 Oracle (オラクル) 962件 ソフトウェア・クラウド 参加あり
17 Facebook (Meta) (フェイスブック(メタ)) 956件 ソーシャルメディア・AI 参加あり
18 Google Data Centers (グーグル データセンター) 829件 テクノロジー 不明
19 Intel Corporation (インテル) 819件 半導体・技術 参加
20 Salesforce (セールスフォース) 795件 クラウド・CRM 不明
合計 42,862件

どうよ?ビザの表には入っていないが、AI向けの半導体製造でぶっちぎりの NVIDIA エヌビディア。CEOは、ホワイトハウスお食事会は欠席したが翌週のイギリスでの国王晩餐会には大*領とともに出席した。このエヌビディアが、同業界のインテル(上の表の19位)へ50億ドル(7500億円)投資に続いて、Chat GPTの OpenAI へ1000億ドル(15兆円)の出資を発表した。

OpenAIはエヌビディアの半導体を使っているので、OpenAIが伸びれば伸びるほど自分ちも儲かる。OpenAIも、Claude AIのアンソロピックも、Perplexity AIも株式上場しておらず、収益は一般に還元されずに投資家たちの中を循環する仕組みになっている。それらお友達の輪はますます仲良く手を取り合い、競争しつつ、政府の力を借りて、上場に伴う煩わしさや規制を逃れ、軽々と巨大になっていく仕組みができちゃった。なーんか変な世界だよっ。

 

 

国際成人力調査(PIAAC)2024年 アメリカ、日本、フィンランド比較(レベル2は中学2年生程度)

国名 読解力 レベル2以下割合 数学的リテラシー レベル2以下割合
アメリカ 40%以上 約60%(レベル2 約33% + レベル1以下 約27%)
日本 20%以下 約20%以下
フィンランド 約20~25%程度 約20~25%程度

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