あーびっくりした。
最近のニュース疲労はハンパなく、秋らしい晴天の昨日は朝から畑に出、ニュースデトックスとして新聞もポッドキャストも聞かなかった。3時のオヤツどきに携帯をいじったら「現在、国外に出ているH1-Bビザ保持者は、21日の真夜中までにアメリカに帰国しておかないと空港で入国拒否されます」という一文が目に飛び込んできた。続く一文は「10万ドル払えば入国できます」。
ええええ〜。在米日本人女子のLINEグループに「これほんとなの!?!?!」とチャットする。みんな気になっていたみたいでどんどん返信が飛び交った。
H1-Bビザとは、大卒(または同等)以上で、エンジニアやお医者さんなど専門職につく外国人向けの勤労ビザ。毎年8万5000人(大卒6万人、修士号以上2万5000人)に限定して発給されて、それ以上の申し込みがあると抽選になる。
数時間後、この入国拒否についてはガセネタとわかった。マイクロソフトやアマゾンなどの大企業が「国外に出ないように」「出ている人は直ちに帰国するように」と社内令を出したというところからそんなふうに解釈されたのかもしれない。これでわかるように、各種ビザ保持者、ひいてはワタシらグリーンカード保持者(明日は我が身?)の間でまたたく間に混乱を引き起こした。
昨日のパニックから一夜たって、今わかっているのは「新規発給のH1-Bビザの手数料は一人当たり10万ドル(1500万円)に引き上げられるが、すでにビザを保持している人については変更はなく、出入国も問題はない」ということ(だけど大企業は詳しいことが明らかになるまでビザの社員に国内に留まるよう指示している)。10万ドルは雇い主、または本人が負担する。
ちなみに今年3月に行われたビザの抽選では手数料が460ドル、その他の諸費用を含めて発給にかかった費用は一人当たり1000ドル(15万円)程度だった。
ビザは3年間有効で、最長6年まで延長が可能。その延長時(新規発給ではない)には10万ドル払わなくてはならないのか、ほんとに出入国して大丈夫なのか、などビザ保持者にはまだまだ不安な状態が続く。
H1-Bビザ保持者は、実は全体の75%をインド人労働者が占めていて、その大半はITに従事する高度エンジニアということだ。特に修士以上の2万人についてはその80%以上がインド人。毎年3月の申込時期には、AIをはじめとするアメリカの超優良テック企業たちが我先にとその枠を買い占めるという噂もあり(特にテスラ)、アメリカ人エンジニアよりも安い賃金で雇えること、そして雇用主のスポンサーがなければビザは失効するので過酷な労働条件でも文句が言えないなど、以前から問題点は指摘されていたビザではある。
優良企業ならば、この手数料を払ってもまだ外国人ITエンジニアを雇用できるかもしれないが、残り25%の枠に属する、インド系以外のH1-Bビザ保持者には、アメリカの大学を卒業したあとこちらで働きたいという若い人たちがたくさんいるのだ、日本人だって。
学位を取得すると、通常1年か2年間有効の OPT (オプショナル・プラクティカル・トレーニングビザ)という就労許可をもらえる。その後企業のスポンサーを見つけてH1-Bビザに切り替えるケースがあるが、社員のスポンサーとなると企業にとって煩雑な手続きと責任が伴うため、手数料は1000ドルだったとしても、もともと狭き門である。それが今回の10万ドル手数料で事実上不可能になるんではなかろうか?
そうすると、アメリカの大学に留学して学位を取得する意味は?長男の大学の同級生、OPTのあと「どうしてもスポンサーが見つからない」と難儀していた。特に彼の場合は、兵役義務のある本国に帰るのを避けたいという強い希望があったので、見ていて本当に気の毒だった。ギリギリで見つかったものの、これがもし10万ドルという値札付きだったとしたら、多分、今頃軍隊でトレーニング中だ。
昨日ショックを受けたのは、ビザ変更発表の直後のいろんな憶測が飛び交う中、サンフランシスコからインドに向けた離陸直前の飛行機からばらばらと席を立って降機していく乗客の映像。機内で「今、ビザの手続き変更の発表があり、21日の真夜中までにアメリカ入国していないと再入国できなくなるおそれがあるそうです」と機内アナウンスがあったため。インドまで行って帰ってきたら絶対間に合わない。
降りる人、立ち上がって携帯で話し込む人、席で顔を見合わせる人。それぞれに家族があり、仕事があり、人生がある。発給側にしてみれば「どうせ75%は優良企業が雇うインド系エンジニアだろ?」を考えに入れての決定だろうが(最近インドのこと嫌いなんだよ、政府は)、その一人ひとりの人生だ。
そして今回は難を免れたとしても(?)アメリカに住むすべての外国人にとって無視できない、そして大きく動揺させられるニュースだ。何があるかわからない、っていうのははっきりしたな。しかも1億5千万払えば永住権もらえるって…一体…。
がっかりしたのは、リスナー数も多く信用がおけるポリティクス関連のメディアやポッドキャストを複数聞いてみてもこのビザ問題はほとんど触れられていなかったということ。インフルエンサー暗殺や政府予算など他に追わなくてはいけないニュースがてんこ盛りで仕方がないといえば仕方がないが、やはりアメリカ人にとっては移民やビザ問題のプライオリティは低いのだ。アメリカが第二の祖国となりつつある立場のワタシらだけど、やはりいつまでたっても外人なんだよねー、大きく取り上げてもらえないということはつまり、自分らの身は自分らで守らないとだめ、ということでもある。
昨日はたった半日ニュースを追わなかっただけなのに、午後にこんな超ド級のニュースが待っていたとは。あーつかれた。



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