この日曜日は「父の日」だった。普段は出不精の次男も「お父さんにランチをごちそうしよう」と誘って三人で出かけることになった。
夫はアメリカ人。何食べに行きたい?と聞くとハンバーガー!とかメキシカン!とか言いそうなものだが、先ず間違いなく却下されることを学習したので大体私の好きそうなジャンルのものを提案するようになってきた。長年の教育の賜物。その日はさすがに父の日なので何でもオーケーだったんだけどね。
アジア系住民の多いエジソン市。電球のエジソンが生まれた町である。元々はイタリアンの人が多かったと聞くが、今はインド系、中国系、韓国系が多くアジア系のご飯ならこの町にたくさんレストランがある。昨今のアジア料理ブームで土日はとても賑わっている。
エジソンに行くことに決めた夫の候補は①回転スシの「くら寿司」(*注 スシは中国系経営の人が多いのでエジソンにもたくさんある)、②ハワイ料理の「ハワイ・ステーション」(*注 ご飯の突き合わせが付いてくるハワイ料理はこちらではなんとなくアジア料理のカテゴリー)、そして③飲茶の「Ugly Dumpling アグリー・ダンプリング」だ。
父の日だが次男の「オー、ダンプリング!」の一声でこのアグリー・ダンプリングに決定。

Ugly Dumpling は「Ugly Ducklings みにくいアヒルの子」をもじった「みにくいギョーザの子」(笑)。なんか、可愛いではない??写真のようにイラスト付きのお店のロゴもカジュアルで可愛い。
ニュージャージーは中国系の人が多いので本格的な飲茶はわりと手軽に食べられるけれど、本格的すぎるところが多分「飲茶は初めて」というアメリカ人には敷居が高すぎるかもしれない。
飲茶に行くとアジア系の奥さんに連れられた白人男性(夫含む)の頭が、黒い頭の海にところどころ突き出ているのが笑える(*差別表現に聞こえないといいのだけど)。夫は座席の奥の奥、私の影に滑り込んで、カートのおばちゃんとは目が合わないように留意している。コワイアジア人の奥さんと暮らす夫でさえこうなんだから、まったくアジア体験のないアメリカ人家族はいくらダンプリングが好きでも足が伸びないのは仕方がない。わたしだってカートのおばちゃん、コワイもん。
カートは自分の所まで来てくれるのか、いざカートが来たらどうやって頼むんだ?頼んだら次々にせいろの蓋を取って「それだけじゃなくてこっちもとれ」と言われたときはどう断る?いや、断るのはマナー違反なんだろうか?たのんでもないのに突然ぶちゅーとかけられたこの茶色のソースはなんだ?!この食感は一体?隣のテーブルのおいしそうな焼きそばはカートで来るのかそれとも別に注文するのか?熱いお茶じゃなくて水はもらえるのか、そしてフォークは?!?!頼んだら怒られるのか????
こんなおそれとドキドキがかわりばんこに去来して、しかもインスタの写真を取りながら「あー美味しかった、また来たい!」というところまで到達するのは至難の業だ。

夫によると、飲茶の店は一概に「ちょっとキタナイ」という。フム、たしかにピカピカの清潔感はないな…上の写真は以前行った本格飲茶やさんで、おぼろ豆腐をつぎわけてくれるおばちゃんの様子。家に帰って写真を見ると確かにジャーもお皿もキタナイ…..
そういうところに目をつけたんだろうかしこい経営者。アグリー・ダンプリングはそういうハードルをすべて取り去って、飲茶を一般のアメリカ人に馴染みやすくしたという功績!を感じさせるレストランだった。なんとウェートレスさんだってパツキンがいる。ちょっぴり中国っぽさをきかせた清潔で広くてモダンな内装。

(「味道実在好」グーグル翻訳によるとTastes Good おいしい)
カートで運んできてくれるのではなく、メニューを見てオーダーするシステムになっている。餃子やシュウマイの飲茶メニューの他に人気のsoup noodle スープ・ヌードル(要するにラーメンね)やチャーハンも頼みやすい。メニューの名称はみんな英語だし、ちゃんと中身とアレルギー成分の説明がついている。普通のレストランと同じ方式で「やってみたかったけどハードル高い」と二の足を踏んでいた飲茶が気軽に楽しめるのだ。
この店一番のオシ、小籠包は5種類あって、全種類の小籠包が一個ずつ楽しめる「シグニチャー・セット」というのをみんな注文している様子。
それもそのはず、それぞれ味の違う小籠包はなんと色違いで、白、ピンク、グリーン、黒、とせいろの蓋を取ったら色とりどりのダンプリングが現れて、みんな「わあ!」と言っている。残念ながらそんなことは知らず「シンプルに豚でね」と注文してしまった我が家だけオンリー白。ちっ。
小籠包をホンモノの飲茶やさんで頼むと、せいろから湯気がもうもう、気をつけないと舌を火傷するくらい熱く熱く蒸してある。あれ、アメリカ人には無理だね。
アグリー・ダンプリングで出てきた小籠包は、ねこ舌の次男だって大丈夫な温度にちゃんと調整してあった。そしてこれが「小籠包の食べ方」イラスト。各テーブルにおいてある。デモンストレーションしてるウェイターさんもいる。

周りを見ると銀髪のおばあちゃん4人が丸テーブルを囲んで物珍しそうに、そしていかにも楽しそうにせいろを触ってみたり、お箸の使い方をお互いに指摘し合ったりしている。すみのひときわ大きなテーブルは、ラテン系の明るい家族がなにかのお祝いのパーティ。テーブルいっぱいに麺やせいろが並べられ、みんながお互いのお皿をのぞきあって大笑いしている。このレストラン、流行らないわけがない。
味は、というと決して不味くはない。本格飲茶に慣れた舌には物足りないが、我が家のアメリカ人二名には大変好評だったと書き添えておこう。小籠包も餃子も食べやすい温度。とんかつが乗ったチャーハンというフュージョン?メニューを私達にわけてもくれず完食した次男は、直後にお腹をさすりさすりとっても満足げだった。



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