ビル・ゲイツの離婚劇

セレブ・ロイヤルファミリー

By Kjetil Ree – Own work, CC BY-SA 3.0, https://commons.wikimedia.org/w/index.php?curid=6934215

先週、朝のコーヒーを飲みながら新聞を斜め読みしていた私の目に止まったのが、

Bill and Melinda Gates Foundation ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団

で共同会長を務めていたメリンダ・フレンチ・ゲイツ氏がその職を退く、というニュースだった。

3年前の離婚時に、夫婦としての関係は解消するが、今後は財団のパートナーとしてメリンダ氏も共同会長の職にとどまると発表されたが、そのときの条件に「2年間は」そして「パートナーとしてやっていくことが限界と思われるまで」が示されていた。

退任を発表したメリンダさんの声明がまたこりゃ見事だった…..とわかったのはもう一度ちゃんと記事を読み返した夕方になってからだった。

なんせ斜め読み、しかもコーヒー前。

独りよがりの解釈

記事の大見出しはこうだった。

With 5 Words, Melinda French Gates Resigned From the Gates Foundation and Taught a Lesson in Emotional Intelligence

「この5ワードをもってメリンダ・フレンチ・ゲイツは財団から退き、エモーショナル・インテリジェンス(感情的知性)について教訓を与えてくれた」

この時点で、私の無意識には天才だがエモーショナルの方は少々難あり、と言われている元ダンナ、ビル・ゲイツの顔がボヨーンと浮かび、ビルのそういうところを20年以上サポートして財団を今の規模まで築き上げたメリンダさん、見出し中の「感情的知性について Taught (教えた)」相手というのはまず間違いなくビルだと勝手に解釈し記事を飛ばし読んだ。

一体どんな5ワード?気になる

「パートナーとしてやっていくことが限界と思われたときには退任する、と取り決めにあったまさにその時がやってきたということだ」で始まるこの記事。この書き出しで私の頭の中で完全にビル対メリンダの構図ができあがってしまった。その直後に、斜め文字になったイタリック体のひときわ目立つ引用符がある。あ、コレね、これが5ワードね!

“Friendly, but not Friends.”  フレンドリーだけど、友達ではないわね。

よく見れば5ワードじゃなくて4ワードだったんだけど、ほら、コーヒー飲む前だったので….。

感情的知性がイマイチといわれるビルは、見かけフレンドリーだけど、友達関係なんか築けないのよ、という厳しいお言葉を残して退任したんか!しえー。これ言われたらビル、致命傷だよねー。怒ったんだろうな、いくらなんでもこれじゃあ巨大財団の共同運営は無理だよねえ、と一人納得し、次の記事へ。

そして、ああ勘違い

夕方に日本語ニュースを読んでいると、メリンダさん退任の記事がある。短めのさっぱりした記事、財団の資産分与や名称変更のことなどがビジネスライクに書かれているだけで、メリンダさんが最後に投げつけたきっつーーーーい言葉のことなど触れてない。ふむ。もう一つチェック。コレもおんなじ。

へー、と思い朝読んだ英文記事に戻ってちゃんと読むと。

きゃ、すごい勘違い!

この “Friendly, but not Friends” は、「離婚しても共同運営を続けるお二人の今の関係は」と聞かれた2年前のメリンダさんの発言だった。「お互いフレンドリーにしてはいますが、(仲の良い)友人同士かと聞かれればそうではありません」という意味の発言であり決して「ビルは友達なんかできないわよ!」って発言じゃなかったの。

先入観の怖さ、ていうかこんな勘違い、うっかり者のワタシだけ?私がイチバン嫌いな言葉「加齢」のせい…..?

で、肝心の5ワードは

今度はちゃんと記事を読み、本物の5ワードを探す。お答えは

“After careful thought and reflection,” 

5月13日の正午に発表されたメリンダさん退任声明の冒頭句。意味は「熟慮と熟考の末」。

ビル・ゲイツに対する最後のやいばでも、今後の決意の言葉でもなく、この一見平凡でよく耳にするフレーズが「究極の5ワード」として書かれた記事であった。

この言葉を念頭に置き、彼女の声明を読む。全文とおして、誤解を招いたり、解釈の仕方が分かれるような表現を全く含まず、この声明の何処をどうつついてもなんの間違いも批判すべき点も認められない、完璧で簡潔にまとめられたわずか4段落の声明だった。

要約すると、熟慮と熟考の上退任を決意したがこの決断はとても難しいものだったということ、財団と今までの業績について誇りととても深い感情を抱いていること、財団は今後もすばらしい活動を続けて行くだろうと強く確信していること、そして今後は女性の地位格差や家族の問題と言った分野でフィランソロピー活動を独自に続けていきたいと示して声明を締めくくっている。

この4段落の中に、元夫のビル・ゲイツ、財団の運営陣、理事会、慈善の対象者、と触れるべき人にはすべて触れ、今後の方向性もほのめかし、退任に至るまでの葛藤も「熟慮と熟考」と表現して去っていく。かっこいいいいいいいい!

勘違いの是正

記事の趣旨もまさしくコレであった。リーダーシップが即決、それも正しい即決を常に要求され、その能力を持っているということがリーダーシップの大条件であるが、この「熟慮と熟考の末」。

これがこの世の中で今、一体どのくらいされているのだろうか。感情的知性をフルに使い、自分だけでなく、世間に与える影響の末のすえまで長期のシナリオを思い描いた後でやっと決断を下す、という作業。ないがしろにされているのではないだろうか。

メリンダさんの声明は「熟慮と熟考」のお手本のような漏れのなさ。今までの実績を見たら「ビルに友達なんかできないわよ!」と言い捨てて去っていくような人ではなかった。あは。ハリーとメーガンの記事ばかり読んでいるせいか自分の頭もすっかりゴシップ化してしまったのであった。

最後にね、メリンダさんのインスタで衝撃の写真を見つけちゃった。愛娘ジェンさんの28歳の誕生日を祝って赤ちゃん時代の娘さんの写真を投稿。

ビルに生き写し!そして覚えていますか、若き日のビル・ゲイツ。カシミアのセーターをダンディに着こなし、髪の毛もちゃんと整った現在の素敵なビルではなく、マイクロソフト創立の頃のビル。あの頃の彼と髪型まで一緒(笑)だ。

どう考えても財団の推進力だったメリンダさんが財団の75ビリオンドルの総資産のうち12.5ビリオンしか貰えないっていうのは納得行かないが、今後の寄付は感情的知性がより高いメリンダさんのほうがガンガン集めていくのではないか。

ちなみに12.5ビリオンドルは約1.9兆円。「たこいち」さんと仰る税理士兼中小企業診断士さんのサイトで、「一日に100万円使っても1兆円を使い切るには2740年かかる」と計算されていた。https://seichoshien.com/?p=1293

1.9兆円はその約二倍だから5500年かかる。とにかく大金だ。

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