「まだ続くバレリーナ農場」と題して今年2月に投稿した以下のブログ。サイトお引越しの際に見れなくなったと複数のコメントをいただいたのでタイトルを変えてもう一度投稿します。
先週このブログの前編、中編も同じく再投稿したので、一番下のリンクから是非除いてみてください。あまり報道されないアメリカの側面、ちょっとわかってもらえるかもしれません。
ここからがオリジナルの投稿です。
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8人目の赤ちゃんを出産後わずか2週間にも関わらず、元バレリーナの完璧ボディで既婚者のためのミスコン Mrs. World ミセスワールド世界大会にアメリカ代表として出場したハナ・ニールマンさん。彼女のことを2日続けて書かせていただいた。
下の「バレリーナ農場」ではハナさんって一体何モノ?について、そして続編の「バレリーナ農場の文化的背景」では、敬虔なモルモン教徒であるハナさん、かなり伝統的なスタイルを未だ守っているコミュニティの一員であることを解説させていただいた。
今日はそのまた続き、この21世紀のアメリカにおける「伝統的なスタイル」の立ち位置というのを深堀りして見たいと思う。
スーパーウーマンがスーパーウーマンでいられる理由
ハナさんは、8人の子どもの母でありながら夫とともに農場を経営し、農場のオンラインショップでは真空パックのお肉や天然酵母のパン作りセット、庭仕事用のおしゃれなトートバッグやエプロンなどを取り扱っており、インスタだけで900万人のフォロワーを誇る彼女と同じものを使ってみたいという(私のようなw)人たちが押しかけ、これだけでもたいしたビジネスウーマンであることがうかがえる。
完璧ボディを保つために努力もしているであろうし、バターやパン、パイや子どものおやつなどすべて、SNSによれば全部彼女の手作りだ。スーパーウーマンには違いないが、それを可能としているのは、子育てを始めとして生活全般を助け合うモルモン教の共同体、若い母親が孤独な子育てに苦しむ事なく多産も可能な骨組みにハナさん家族が属しているいうこともあるのでは、と書いた。
「アドバンテージもある保守的なコミュニティではあるが、ワタシ的に気になるのはこういったコミュニティでの「女性」の立場だ。伝統的、イコール女性の役割が限定される、おそれが?
ハナさんの所属するモルモン・コミュニティ、お父さんは?シスター・マムならぬ「ブラザー・ダッド」はあるのか?お父さんたちは子育てに積極的に参加するのだろうか?
人の生き方や考え方に文句をつける権利は誰にもないしそのつもりも毛頭ないが、彼女のようにあまりにも強烈に輝くビーコンは下手すればそれを政治的に利用する輩(やから)が出てくる。それが気になる…..。」
と前回のブログの最後に書いた。このような昔ながらの共同体、ひとつ間違えば「男女の役割」のステレオタイプの木枠に個人の意志と関係なく無理やりはめられてしまう、という危険を孕んでいると言えなくもない、と実のところ思っているわけよ。
伝統回帰を夢見る保守派
普通によく使われる
Family Value ファミリー・バリュー
という言葉。「家族の大切さ」または「家庭の価値観」という意味の一見普通の言葉であるが、実はこれが保守とリベラルの二断化が進むアメリカでは、この言葉に政治的なふりかけをかけると
Tricky トリッキー 油断がならない、癖がある
言葉となりうる。
保守派の夢見る「家族」とは、「男は外に仕事に行き、女は家でめしを作り子どもを育てる。仕事で疲れた夫に温かい食事を出し、足のマッサージなんかもやってくれたら最高。妻は美しく、けっこう才覚もあり乾かしたハーブや手作り品をオンライン販売、家計の足しも稼ぎ出したりしたらますますけっこう。」
これはま、極端な書き方ではあるけれども、方向的には間違っていないというのがなんともアンチ21世紀。女子の教育を否定するタリバンの、結局は女性を無知のまま家庭でしか生きていけないようキープして男性のみに都合の良い社会を作りたい、という本音は、保守派の夢理想社会と根底に流れるものは一緒だ。
保守派のビーコン?
ミセス・ワールドの一つ前、ミセス・アメリカンのときのインタビューで『今まで一番自分が女性としての自信に満ち溢れたと感じた瞬間は何ですか?』と聞かれたハナさん、
『私には今までそんな瞬間が7回ありました。それは出産後に自分が産んだ神聖な赤ちゃんを母として自分の胸に抱いたときです』
と答えた(この時点で8人目はまだ妊娠中)。
これがね~、
女性の中絶なんてとんでもない、仕事で外に出てバリバリと社会参加をするよりも家で神様が授けてくださるだけの数の子供を産み、家族の世話をすることこそ女性が喜んで果たすべき役割だ、と思っているらしい伝統回帰主義の保守派にバカウケしてしまった。
American Family News アメリカンファミリーニュースなど、正しい「Family Value」を提唱する各種の保守派雑誌や記事でハナさんはガンガン紹介され、これでもかというくらい上の「名言」が繰り返された。
文句も言わずに8人の子どもを産み、家庭に入って家族の食事を手作りしながらこの美貌を保ち、お金もちゃんと稼ぐ。地域の教会行事に積極的に参加する地域の女性リーダー的なハナさん。これが保守派の究極の理想像と言わずしてなんと言おうか。きゃっ。
彼女は意図せずして?あっという間に保守派のビーコンへと祀り上げられてしまった。
うーん、意図していた、かもな。だって彼女すごいビジネス・マインドのある人だから。アメリカの半分をしっかりと自分の味方につけたらあとはもうデザインの違うエプロンを次々にショップに上げて売りまくるだけだ!
そして炎上もありはありなんだけど
多くの女性がやっと抜け出すことに成功した『伝統的な女性の役割』をSNSでの影響力を使ってアピールしていることが弊害だと反対側からは叩かれる。
あまりに毎回産後に体型がすぐにもとに戻ることが一般の女性のプレッシャーになると批判される(それはさ、ハナさん責められても困るよね)。
ハナさんはこのことについて、
『人生で成し遂げたいことはみんな違う。私の場合はそれが子どもと過ごす時間だったと言うだけです。』
しごく真っ当。裏にプロデューサーがいそうな発言ではあるけれど、ハナさんも、他の人もみーんな自分の生き方は自分で選べばいい。たくさん子どもが欲しい人も、私は母親にはなりたくないという人もいる。家にいても外で働いてもそんなの人の勝手だ。
怖いのは、こういう目立つ人の生き方を「お手本」として社会のシステムから否応なしに押し付けられることだ。ハナさんを取り上げたたくさんの保守派の雑誌や記事、「女性としてこんなに満たされた生活をしているこの美女、見習いなさ〜〜い!?あなただってやろうとしたらできるんだよ、いいでしょう、この暮らし?外で働いてこざかしくなるより社会のためよ?あなたも幸せよ?」と、すでにそういう雰囲気がビシバシだった。
広大な農場経営や、今のアメリカで8人も子どもを持てる財力、莫大なお金がかかると言われているコンテスト参加などすべてが、上位数%に属する富裕層であるからこそということはもちろん全く触れられていない。
そして女性一人ひとり、属するコミュニティからの有言無言のプレッシャー。9人10人子どもを生んで育てることが当たり前のコミュニティーで、「私は将来医師になりたい」と思った若い女の子は、ちゃんとその道が許されるのだろうか。
明日以降のブログでは、ミスコンに出場する、ということの立ち位置と、ますます両極化が進む政治的・社会的背景の中で、女性の進出が日本に比べてずっと進んでいると思われているアメリカの意外な一面を探ってみたい。また読んでね!
オット忘れないうちに。これがハナさんたち経営のバレリーナ農場のサイトよ。

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