カフェではテーブルの上のラップトップとにらめっこでそれぞれの作業に没頭するお客さんの姿、というのが日常的な光景だけど、あれ?最近、特に若い子たちが紙の本を手に持って黙々とページに目を走らせる姿を見かけるようになった。それもちょっとくたりとした古めのペーパーバックが多い。うちの長男も、帰省するときは必ずそういうきたなめの本をバックパックから取り出すことが多いが、アメリカで大流行の「Second Hand Shop セカンドハンドショップ(リサイクル店)」で無造作に積み重ねられている本の中から気になったものを5冊1ドルで買ったり、ゴミの日に道に出されている本の中にもかなりの確率で掘り出し物が見つかる、ということだ。
若い世代、キンドルでデジタル本を読むよりも今は「紙」のほうがカッコいいみたい。デジタル疲れ、SNS疲れで「本」回帰傾向にあるアメリカでは世代にかかわらず本の人気も売上も増えてきているし、何より充電の心配をしなくて良い、ダウンロードしなくて良い、拾ったり図書館で借りればただで読める、といいことづくめの紙の本。
特に若い世代はバックパックで持ち歩いても「肩が凝る」「荷物が重くなる」などどいう心配が少なくて済むしさ。私ら世代は3冊もバッグに入れて持ち運んだら翌日は筋肉痛....ということでなかなかキンドルを手放す勇気はないが、若い世代、頑張れ。本の地位回復と向上に励んでほしいものだ。
全国展開のバーンズ&ノーブルなど大型書店の売上は回復傾向にある。バーンズ&ノーブル2024年度の売上は前年比16%。が、紙の書籍回帰の最近の目立った特徴は「独立系書店の増加」つまり「地元の本屋さん」が戻ってきている、ということだ。2020年以来、3年連続で200店舗以上の独立系書店が新規開店している。
独立系書店の強みは「地域密着」型経営。地域にちなんだ本を取り揃え、ローカル作家の朗読会、ブッククラブ、本に関わるイベント、子どもの本パーティなどが度々行われて、大型書店にはない「コミュニティ感」が味わえる。売られている本の値段はアマゾンとは比べ物にはならないが、多少の差額は地元の本屋さん存続のため、とわざわざそちらで購入することを選ぶ人も増えている。
2020年に始まった書籍のオンラインストア、Bookshop.org ブックショップ.org は多くの独立系書店と提携しており、購入側は貢献したい書店をリストから指定して買うことができる。指定しない場合でも一部がちゃんと全体への還元に当てられるというビジネスモデル。直接足を運ぶ時間がなくてもここで買い物をすれば、地元書店への貢献となるという新しいプラットフォームだ。開始から3年間で35ミリオンドル、約50億円をすでに還元しており、地元型書店の存続に大きく貢献している。これがサイト。
2024年のベストセラーの一つ、マット・ヘイグ著の「Midnight Library 真夜中の図書館」という本を例にとって値段を調べてみた。
アマゾン:ハードカバー19ドル、ペーパーバック9ドル。キンドル版が13ドル
ブックショップ:ハードカバー26ドル、ペーパーバック17ドル。


その差額は約7ドル、スタバのラテ、グランデサイズのお値段だ。喜んで貢献させてもらおうじゃないの。
Z世代はお金がないので、本は図書館。または道で拾うんだが、書店ブラブラの喜び、これは金欠でもただで楽しめる。本好きな人が集まる静かな本屋さんには足を踏み入れるだけでなんだか寂しさが紛れるし、つい手が伸びるSNSの誘惑もつかの間忘れられる。
なんだか、人間って強いね?デジタルづくめは良くないって体の何処かでわかっているんだ。デジタル本が隆盛し、いずれは絶滅するんじゃないかと言われていた紙の本や印刷物が、静かだけど地殻変動のごとくすごい力でゆり戻ってきている感じ。デジタルの動きに乗り遅れたままチョロチョロとなんとか後ろをついて歩いてきたアラ還、やっと慣れたと思ったら世間は反対に向けて動き始めていた、という話。でもそれが「本」ということなら大歓迎だ。



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