トラッド・ワイフ?ホームステディング?

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#Tradwife または #Tradwives というハッシュタグスレッドをご存じだろうか?

Traditional Wife トラディッショナルワイフ 伝統的な妻

の略。定義は

A woman who embraces traditional gender roles and marriages in Western culture 西洋文化において、伝統的な性的役割と結婚のあり方を積極的に受け入れる女性

となっており、「家事を引き受け、一家の大黒柱である夫を支え、夫と子供の世話をするために家庭に入る」という説明書きが続く。

キャリアを追求せず家に入り、50年代の主婦のように家事と子育てを妻の単独責任として完璧にこなす様子。それをTikTokやインスタのコンテンツとして配信するZ世代やミレニアムのインフルエンサーたちが、何十万、何百万というフォロワーを獲得してこのハッシュタグがトレンドとして確立した。

#Homesteading ホームステディングというハッシュタグもある。ホームステッドとは、もともとは開拓、入植して作り上げた自分の家や敷地を意味する。NHKの「大草原の小さな家」、あれよ、あれ。畑や鳥小屋や井戸なんかも敷地内にあれば、それらをすべてまとめてホームステッドと呼ぶ。俺ん家、って感じかな。

人里離れたロケーションに引っ越し、打ち捨てられた家を格安で手に入れて夫婦で協力して手直し。ソーラーパネルで発電し、畑を耕しニワトリを飼い、できるだけ自給自足の生活を営むそのトレンドをホームステディングと呼ぶ。このコンテンツも大人気だ。

トラッドワイフのインフルエンサーは女性だが、ホームステディングの方は夫婦が多い。男性が木材や建築の絡む力仕事、奥さんのほうは畑や食べ物、家の中関係の仕事という役割が自然とでき、採れた野菜を器用に瓶詰めにしたり、ハーブで塗り薬を作ったり、という昔ながらの家庭経営の様子が前出のトラッドワイフたちと重なり、奥さんたちのほうはホームステッドワイフ、と呼ばれることもある。

んで、トラッドとホームステッド、どこが違う?ということになる。かなり暴力的にまとめると、最大の違いは、夫婦の関係性がトラッドワイフの方は「献身」、ホームステッドの方は「対等」ということだろうか。

トラッドワイフの台頭(?)は、長い道のりを経てやっと手に入れた女性の自立や自由を「私はやっぱり女だから」と自ら手放してしまうの?SNSで50年代のような伝統的な暮らしを美しく夢物語のように描いているけれど、ちょっと待って、その時代には女性には今のような選択の自由はなかったんだよ?それを忘れてもらっては困る、とアメリカで物議を醸し出している。

人がどんな暮らし方をしようと人の勝手だと思うし、そういう動画を見て「なんて素敵なの、私もていねいな暮らしがしたい」と思う人もいれば「へーんなの、私にはムリ」と思う人もいる。トラッドワイフさんたちの家族がそれでうまく運営されているのなら万々歳だ。が、ときに目にするご本人たちのコメント、ものすごい数のフォロワーからのコメント、そしてそのレスの応酬が怖い。

よく見るのは「性役割は神様が決めたこと」「女性に与えられた最も尊い仕事は夫に仕え子供を育てること」…..。これだよ、これがあかん。

Most Famous Tradwives トラッドワイフの誰が一番有名?と検索してまず出てくる名前はEstee Williams エスティ・ウィリアムスさん、26歳。うーん、見た目マリリン・モンロー?

 
 
 
 
 
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上のコメントは、Promoting Traditional Marriage encourages men and women to take on their God given roles. 「伝統的な婚姻の形」を広めることで、神様がお与えになった性役割というものを男性と女性がちゃんと果たすことになります。

Traditional Marriage、と頭が大文字になっているところに注目していただきたい。 「昔ながらの結婚形態」という表現を、サラリと述べるのではなく彼女らが理想とし、実践・推奨する婚姻の形の狭義のザ・名詞となっているようだ。オジイサンは外で芝刈り、オバアサンは家で洗濯……。

ふむ、時代逆行ではないですかね、このコメント…..?お洋服と髪型もなんともレトロだ。でも、でも、個人の選択の自由だよね、とおばちゃんは自分に言い聞かせる。

フォロワーさんたちからのコメントは、その伝統的な結婚の形をちゃんと守ろうとしない女性たちや世間への偏見にみちた意地悪なもの多数。「仕事にかまけて子供の世話をしないならなんで子供を生むの」「妻が真剣に家のことをしないと夫は浮気するに決まっている」とかさ。それがやばい。

んで、神様が与えた性役割、イコール、アンチLGBTQ。フォロワー数20万人。そんなに仲間がいるんなら私も堂々とアンチLGBTQしても良いんだわ!と思う人も出てくるに違いない。

ま、このエスティーさんはちょっと極端な例だが、彼女の次に名前が出てくる Hannah Neeleman ハナ・ニールマンさん、彼女についてはこのブログで3回に渡って書かせていただいた。

変種」トラッドワイフ?バレリーナ農場のハナさん

今年2月に書いた以下のブログをぜひ読んでいただきたい。ユタ州に住む元プロのバレリーナ、ハナ・ニールマンさん。旦那さんと「バレリーナ農場」という農場兼オンラインショップを営むハナさんにはなんと8人の子供がいる。8人目の出産後わずか2週間で、なんと「ミセスアメリカ」というビューティコンテストの全国大会に参加した。

 

バレリーナ農場
Photographs by Bridget Bennett for New York Timesいや~びっくりした。上の写真のすごい美女、よく見て。胸に新生児を抱え、もしかしたら授乳中?これは今年のMrs. World ミセス・ワールドビ...
 

彼女のインスタのフォロワー数は900万人。天然酵母のパンを焼き、絞ったばかりの牛の乳でバターを作る。素朴な木のキッチン作業台や重そうな鉄のダッチオーブン。シリコンのマゼマゼや便利グッズは見かけない。とてもノスタルジックだ。

生後5ヶ月になる末娘のフローラ・ジョーちゃんは、あれ、なんていうんだっけ、抱っこ紐ならぬだっこ布?胸にしっかりとくくりつけて器用にフライパンを操る。

 

今日の晩御飯はラムのロースト入り手作りパスタ….

料理の途中で「あ、パセリがいるわ」と子どもたちとハーブを摘みに行き、自分ちのはちみつでお菓子を作る。クラッカーだって箱入りじゃなくて自分で作る。もちろん牛の乳搾りをする画像もちゃんと見ることができる。

できたバターやヨーグルトを保存するのはプラスチックなんかじゃないよ、アメリカの伝統的ブランド、Ball 「ボール」ブランドのガラスのメイソンジャーだ。

 

バレリーナ農場の文化的背景
先日、産後わずか2週間の完璧ボディで既婚者のためのミスコン、Mrs. World ミセス・ワールドにアメリカ代表として出場したハナ・ニールマンさんという女性について書かせていただいた。アメリカではビューティ・コンテストというものの立ち位置は...

 

彼女を「元祖」トラッドワイフと呼ぶ人も多いが、彼女はトラッドワイフ風の、実はビジネスウーマンだ。確かにトラッドワイフの定義「外で仕事をしていない」には当てはまるが、家にいて自分のスーパートラッドワイフぶりをSNS上でマーケティング演出する、という立派な仕事を持つビジネスウーマン。

自分たちの食べるものは野菜も肉も自給自足し、バレリーナ農場に(言っちゃ悪いが)夫よりずーっと貢献している。完全に対等、もしくは対等以上のパートナーシップ、それを考えると彼女はトラッドワイフとホームステディングのクロスオーバー変種と言える。

ハナさんは宗教的、政治的な含みのある発言をしない。敬虔なモルモン教徒であるハナさんはもちろん自分の生活の一部としての信仰はコンテンツに登場するが、他のインフルエンサーにありがちなお説教っぽいとこは全くない。やっぱ賢いビジネスウーマンだ。その影響力ゆえ色んなところで叩かれてはいるが、どこ吹く風、全く投稿にブレがない。

ムーブメント化

繰り返しいうがどんな人生を選択しようと人の勝手。外で収入を得てこなくて良いというラッキーな状況にいるのなら、家族に尽くすという選択、大いに結構。

トラッドワイフでもホームステッドでもなく、ただ家事や料理が得意で大好き、それを動画にして家事のヒントをシェアしてくれるノンポリ派だってたくさんいることを忘れてはいけない。

トラッドワイフがこうも大きなトレンドになってくると、ただでさえ極端に分断しているアメリカ「そうだそうだ、女性は女性らしくしているべきだ!」と、保守的な性役割を女性に押し付けようとするムーブメントに発展する例も少なくない。

そのムーブメントを喜んで受け入れるどころか自らインフルエンサーとなり「女として、妻として、母として」の幸せを全世界に向けてアピールする女性たちを「自立した女性の敵」として見る、反対側に立つ女性たちもいる。不穏な雰囲気がSNS上に漂っている。

個人的な意見を述べさせてもらうと

おばちゃんはホームステディングは大好きだが、トラッドワイフはご遠慮願いたい。これはもう個人的な見解なのでここで説明(弁解?)する必要もないと思うが、あまりにも保守的すぎて、そしてウソっぽくて(ごめん)お口に合わないの。

本当に夫が帰宅する時間にはディナーの用意と自分の身だしなみをすませて待っているのか?五歳以下の子供が4人もいるのに絶対にイライラしないのか?妊娠中の9ヶ月の間、そんなに美しい笑顔で写真を取りまくるほど例外なく毎日シアワセだったのか?という感じ、わかっていただけるだろうか。

ま、これはホームステディングも同じだが、何かするたびにわざわざカメラの位置を確認し、夜子供が寝てから編集するんだよね。本当にキッチンには毎日あんな豪華な花が完璧に飾られているのか!?なーんかさ….とSNS世代じゃないおばちゃんは見ていていつもどこかで「ナルっぽいな」とシラけてるんだよね。

明日以降は

お口直し?に今後はおばちゃんが最近 YouTube でハマっているホームステディングのインフルエンサーをご紹介していきたいと思う。ひとつはオランダ人の独身男性。イタリアの山奥を開拓中。もうひとつはスペイン人のカップルで、ポルトガルのこれもまた山奥に入植中。

自分にはできない壮大なプロジェクト、家のソファで毎週の動画更新を楽しみに待つ日々。

 

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